5人が本棚に入れています
本棚に追加
「珍しいですね、佐古さんにお連れ様がいるなんて」
「同僚だよ・・・・あれ?野木崎、上着は脱がないのか?ここセルフだから・・・・」
「あ。すみません、お客様・・・・通路が大変狭くなっておりますので、そちらはセルフになっているんですよ。その分、お酒やフードのサービスはしっかりご提供させていただきますので」
「あ、いえ。大丈夫です」
バーテンダーの言葉に杏は愛想笑いを見せ、手のひらを向けて揺らした。
バーテンダーに背を向けるようにして、脱いだ自分のコートを掛ける隣の佐古に杏は小声で話しかける。
「・・・・てか課長、私脱げないです」
「あ?」
「急いで来たから部屋着だし・・・・」
「別に、ドレスコードなんかないよ。スウェットだって平気だよな?」
佐古は振り返り、バーテンダーに向かってそう言うと頷く彼がいた。
「ええ、特にありません」
「ほら」
「そういう問題じゃないの!」
「ふーん。ま、好きにしろ」
佐古がカウンターチェアに座ったのを見計らって、バーテンダーは声をかける。
「佐古さんはいつも通りで?」
「ああ。・・・・野木崎はどうする?メニューはそこにある。何もないならお任せもできるけど?」
杏はダークブラウンで黒光りするカウンターテーブルに置かれたメニュー表を手に取った。
「課長はいつも何を?」
「俺はジョニ黒」
「ジョニーウォーカー?ウイスキー?」
「正しくはスコッチな」
「ふーん、じゃあ私もソレで」
メニュー表を元に戻してバーテンダーにそう告げた。
「飲み方はどうなさいます?」
「ああ・・・・課長と同じで」
「ストレートですが大丈夫ですか?ロックかソーダで割ることもできますが・・・・」
「ああー、とりあえずストレート?で・・・・」
「かしこまりました」
最初のコメントを投稿しよう!