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バーテンダーは注文の確認をしてすぐにお酒の準備にとりかかった。
「野木崎って酒強いのか?」
「弱くはないと思います」
「勝負するか?」
「勝ったらおごってくれます?」
「そりゃあ、当然」
「お二人とも、無理はしないで下さいよ」
バーテンダーの今村はそう言いながら、ウイスキーを入れ終わったショットグラスをテーブルに出すために一度カウンター台に置いた。
それに佐古がいち早く手を伸ばし、グラスをつかもうとしたところでバーテンダーに話しかける。
「飲み慣れてない場合は、ハーパーの方が飲みやすい?」
「ハーパーでしたら比較的、バーボンの中では飲みやすいとは思いますが、穀物特有の雑味が苦手とおっしゃっる方も多いようです」
「それじゃ、こっちは?」
「ジョニーウォーカーの黒ラベルはスモーキーさが目立ちますので、やはりこちらも好みが分かれるかと・・・・」
「まあ、それよりもバーボンとスコッチの違いが分かるかも怪しい・・・・」
そう漏らしながらグラスの一つを彼女に渡し、すぐにもう一方を持って掲げた。
「乾杯」
佐古は杏の方に軽くお辞儀してそう言い、彼女が持っているグラスに近づけようとしたところで杏はそれを飲み干した。
「おい馬鹿、これはがぶ飲み用じゃないんだぞ?もっとじっくり飲むものであって・・・・」
「おかわり下さい」
「おい、待て!野木崎!」
「じゃあ、止めます?課長の負けってことで・・・・」
佐古は怪訝な顔を杏に見せて、正面にいる今村の様子を一度、窺った。
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