5人が本棚に入れています
本棚に追加
「君の怒りは尤もだと思う。だから、君の行動は正しくなる、たとえ俺を殴っても正当防衛。ただ、それが通じるのは価値観が同じもの同士・・・・俺以外にはしないと約束してくれ」
野木崎は鼻であしらうように笑った。
「知ってます?課長、影で雑魚課長って呼ばれてるんですよ?・・・・そんなんだから」
「知ってるさ・・・・それに本当のことだ。仕方ない」
俯く男の顔を覗くように見て、彼女は笑った。
「嫌だな~そういうくたびれたオヤジ!仕方ない、そういうもんだ、って言うだけのつまんない人生。それが課長の歩んできた道?社会に従順に動くだけのイヌ?最悪なんだけど!」
そう話してすぐ男の方をチラッと見るが、彼は何の反応も示さずにタバコだけを吸う。
「聞いてんの?雑魚課長!」
「ああ。雑魚で結構。雑魚でもいいダシは取れるもんだ」
彼は笑ってはぐらかし、立ち上がった。
「辞めたいのなら退職届を出せ。そうじゃないのなら、会社に来い。文句でも何でも聞いてやる。俺を罵りたけりゃ好きなだけ罵れ。それでお前がやる気になるのなら・・・・」
「何ソレ。」
「いいか野木崎、雑魚がいるから他が引き立つ。お前にとって俺は最低なヤツで構わない。底辺こそ住み処、その住み処に誇りを持っている。だから、それ以上物事を引っかき回すな」
その言葉に野木崎は立ち上がった。
「何ソレ!それじゃあ、私が悪いみたいな言い方じゃないですか!」
佐古は素早くタバコをベンチ横の灰皿に投げ入れ、即座にその場に正座した。
そして、地面に額をつけると同時に話し出した。
最初のコメントを投稿しよう!