水を得た魚

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「君の怒りは(もっと)もだと思う。だから、君の行動は正しくなる、たとえ俺を殴っても正当防衛(せいとうぼうえい)。ただ、それが通じるのは価値観が同じもの同士・・・・俺以外にはしないと約束してくれ」 野木崎は鼻であしらうように笑った。 「知ってます?課長、影で雑魚(ざこ)課長って呼ばれてるんですよ?・・・・そんなんだから」 「知ってるさ・・・・それに本当のことだ。仕方ない」 (うつむ)く男の顔を覗くように見て、彼女は笑った。 「嫌だな~そういうくたびれたオヤジ!仕方ない、そういうもんだ、って言うだけのつまんない人生。それが課長の歩んできた道?社会に従順に動くだけのイヌ?最悪なんだけど!」 そう話してすぐ男の方をチラッと見るが、彼は何の反応も示さずにタバコだけを吸う。 「聞いてんの?雑魚課長!」 「ああ。雑魚で結構。雑魚でもいいダシは取れるもんだ」 彼は笑ってはぐらかし、立ち上がった。 「辞めたいのなら退職届を出せ。そうじゃないのなら、会社に来い。文句でも何でも聞いてやる。俺を(ののし)りたけりゃ好きなだけ罵れ。それでお前がやる気になるのなら・・・・」 「何ソレ。」 「いいか野木崎、雑魚がいるから他が引き立つ。お前にとって俺は最低なヤツで構わない。底辺こそ()()、その住み処に(ほこ)りを持っている。だから、それ以上物事を引っかき回すな」 その言葉に野木崎は立ち上がった。 「何ソレ!それじゃあ、私が悪いみたいな言い方じゃないですか!」 佐古は素早くタバコをベンチ横の灰皿に投げ入れ、即座にその場に正座した。 そして、地面に(ひたい)をつけると同時に話し出した。
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