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「悪いのは俺だ。申し訳ない、野木崎。こんな駄目な男が上にいるから、下が苦労するんだ。俺だって辞めたい、だが行く当てどころか、40にもなって転職先が見つかるとは思えない・・・・俺だって甘んじてるんだよ、この会社に。頼む・・・・問題を起こさないで欲しい・・・・」
野木崎はか細い声でそう言う佐古を見てから周囲に目を向けた。
数人がこちらに注目していて、中には嘲笑を見せる男の姿もあり、野木崎は彼の左腕をつかんで顔を無理やり上げさせた。
「やめて!分かったから!なんか恥ずかしいし・・・・絶対コレ、さっきの水のお返しでしょっ!わざとらしい!」
喚き散らす野木崎に引っ張られて佐古は立ち上がり、何食わぬ顔でスーツについた砂を払った。
「ああ、バレたか。それと、雑魚呼ばわりもな」
「あのねぇ!・・・・」
そのまま木の陰まで連れてきて、彼の顔に拳を突き出そうとした瞬間、佐古は叫んだ。
「あ!おい、注文した品が届く時間だ!急いで戻るぞ!」
彼はいち早く走り出し、野木崎も仕方なく彼の後を追った。
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