それぞれの目的

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野木崎が自宅として借りている1LDKのマンション部屋のリビング。()いてあるベージュの絨毯(じゅうたん)には雑誌やスリッパなどが散らばっている。 ソファーに寝そべってテレビを見る野木崎(のぎさき)(あんず)とルームシェア仲間の女性が話をしていた。 「ズバリ!課長と杏の関係は?」 「水と油、くそくらえ。」 話しかける女性は風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭きながら、杏の寝るソファーにもたれかかっている。 「またまたー、私今日見ちゃったよ、公園で課長とイチャイチャしてたの」 「ユキさあ、それメガネちゃんとかけて見たぁ?イチャイチャどころか、ただの言い争いだっつーの!」 ユキの頭を足で小突(こづ)くが、彼女は構わず話を続ける。 「でも課長ってああ見えて大手企業の花岡(はなおか)グループ、花岡家の長男なんでしょ?」 「バーカ。花岡久晃(はなおかひさあき)は自分の子とは認めていないらしくって、元妻の公子(きみこ)とは事実婚。法的にも花岡の子供として扱われることはないし、公子が不倫相手とつくった子だと言われていて、花岡家の権利は一切与えられていない・・・・みたい」 杏は天井を見上げながらそう話す。 「つまり、ただの他人?」 「下手したら凡人(ぼんじん)以下・・・・」 「で、なんでそんな人の素行調査をみんな(こぞ)ってやってるワケ?」 「知らない・・・・血の繫がりとか?(あや)しいんじゃない?」 「不倫相手の子供じゃ血は繋がってないのは明確でしょ?」 「できちゃった婚、または隠し子がいる?みたいな記事がこの前の週刊誌に出てたけど、結局あやふやにされて終わったし・・・・」 「公子が花岡の財産欲しさに、そういう存在をつくったとか?」 「あるいは長男があまりにも問題児だったから、血が繋がっていないことにして花岡家から遠ざけたって可能性・・・・昔がかなりヤバかったらしいんだよね」 「ヤバイ?」 「不良少年だったみたいで・・・・少年院入ってたらしい」 「へぇ・・・・あの()えない課長が?」 「そう。あの、冴えない雑魚課長が。」 そこまで話すと杏は起き上がって、キッチンに向かった。
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