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雪が解けて水が滴り落ちる並木通りを走って、俺は修作に会いに行く。
……俺は用意周到だ。変なところで用意周到だ。
――俺はずっと、ずっと、ずっと!
しかし走っていたおかげで路面を滑ってしまった。――ガタッ!と痛みを伴わせる音を立てて、尻もちをついた俺は、「いてぇ……」と寂しく呟いて立ち上がろうとした時。
「なんで走ってきたの、圭太は……。頭でも打って脳震盪でも起こしたら危ないでしょ?」
「……修作」
「もう。連絡来た時には驚いたけどさ、危なっかしいからちゃんとゆっくり来てよ。……危なっかしくて見ていられないよ」
そう言って手をつないで俺をゆっくりと立ち上がらせたかと思えば、修作は熱を帯びた瞳で俺を見る。
――まっすぐなその黒い眼に惹かれてしまう。
……あぁ、やっぱりそうなんだ。
俺はちゃんと自覚したんだ。
「それで、告白としては……俺は成功したの?」
真剣みをおびたまっすぐで貫くような視線に、俺はわざと修作の身体に引っ付いた。
コートのふわふわした感触が気持ちよかった。
「……これが俺の答え。修作にはわかるかな?」
すると修作は瞳を大きくしてから、俺に顔を近づけて……唇の手前で問いかける。
「じゃあ俺がしたいこともわかる?」
今度は俺が目を丸くしてにっこりと笑い返す。
「わかるよ。……じゃあ、シて?」
「ははっ。本当に圭太ってさ……」
――用意周到だよね。
そして触れた熱は冷たさも相まって気持ちが良かった。
(こんな気持ちは初めて出会った感覚だ)
ふと過ったのは言わないでおこう。これは俺がこいつを繋ぎとめる、思い出で切り札なのだから。
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