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夢華はそう言われると、少し時間を置いてから口を開く。
「ここにいても、いいから。
ともみと、みんなと、いっしょにいてもいいから」
分かっている。
夢華は全て分かっている。
誰一人として自分を否定していない。みんな自分と一緒に居たいと言ってくれる。この前の学校のみんなだってそうだ。
……自分が存在する未来を選ぶといなくなってしまう、母ですらも。
「そう!だからさお姉ちゃん」
「……ありがとね」
夢華は初めて友美に笑みを向けるとその場を走り去ろうとする。そんな夢華の手を友美は引き留めるように掴むとこう彼女に言う。
「わかる、わかるよお姉ちゃん
…正直、私もお姉ちゃんと同じ立場なら同じことをしようとする。何よりもお母さんが、そしてお母さんと一緒にいるみんなが好きだもんね」
そのまま夢華は聞く。
「きっと私たち、既にお母さんに似てるんだろうね
…お母さんもお母さんで自分を犠牲にして私たちを…」
「…だね」
夢華は優しく友美の手をほどく。
「……やっぱり行っちゃうの?お姉ちゃん」
「ごめんね」
「……そっか」
友美は酷く寂しそうな、今にも泣きそうな声でそう夢華の背中に声を掛ける。夢華はそれに背を向けたまま頷くとそのまま走り去って行った。
少しでも早く行かなければ、決心が揺らいでしまいそうだったから。
夢華がその空間からいなくなるその直前に、友美が酷く泣いている声が聞こえた気がした。
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