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はじまり たいいくかん
気が付いたら彼女は肉の部屋にいた。
四方八方を肉壁に覆われた空間。そこは彼女にとってとても温かく、何よりも落ち着く空間。
「おかあさん、たすける」
おおよそ高校生くらいであろう彼女はそれだけ不意に呟くと、突然メキョメキョと肉の壁に開いた穴をふらふらと歩いていく。その奥は漆黒の暗闇に包まれていた。彼女は意に介さず進んでいく。
そしてしばらくすると彼女は別の空間にいた。
そこはとても広い空間で、椅子が沢山置かれている。彼女にはここが何なのかは一切分からないが、ここは体育館だ。壁や床と言った箇所には血管や肉が生えていて全体的に赤黒くなってしまっている。
「なにこれ」
彼女はその椅子という物も何なのか分からないのだが、特に気にせずに進んでいく。
「あそこに、ある」
目的の場所は体育館のステージ。ステージの中央に何か明るくて暖かい光が見える。あれが目的だ。
その時、彼女の行く手を阻むように床の肉から何かがもこもこと生えてくる。
それはみるみる内に人の形を成し、いかにも彼女を進ませないと言った雰囲気だ。
「じゃましないで」
彼女はそう言うとそこを無理矢理通ろうとするが、その肉の塊は彼女を軽々とお姫様抱っこで持ち上げると担ぎ上げ、入り口まで丁寧に戻してしまう。
「…ありがとね」
彼女はちょっとだけ寂しそうな顔をしてそう言うと、素早く走り抜けて肉の人を避けて進み、体育館の奥の台まで辿り着いた。
肉の人はその様子を見て大慌てで彼女をさっきのように連れ戻そうとする。
だが、彼女は既に目的の白いオーブのような光まで辿り着いていた。
「ごめんね」
手を触れる前に、肉の人に謝罪すると彼女はオーブの光に手を突っ込んだ。最後まで肉の人はそれを止めようと必死に走っていた。
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