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「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
光に包まれた。と思ったら彼女の身体を揺さぶってくる愛おしくて堪らない人の手があった。
「…ともみ」
「もー、卒業式前に寝落ちだなんてお姉ちゃんらしいや
さ、早く行こ!みんな待ってるよ」
ともみと呼ばれたこの人物は、彼女の妹である。
とても優しくて元気で可愛らしい人気者だ。
そこはさっきよりはだいぶ狭い部屋。相変わらず椅子や自分が寝ていた机と同じ物が沢山置いてある。
「うん」
そつぎょうしき、などもやはりよくわからないが何やら周りの人も浮わついていたり、切なそうな顔をしている。
そうしているうちに友美(ともみを漢字で表記すると友美になります)に手を引かれるまま姉はそのままさっきの体育館へ辿り着いた。
そこには大勢の自分たちと同じくらいかもしれない年齢の人たち。そして大人たち。さっきの高台には偉そうだけど優しそうなおじさんがいる。
そして胸元にお花のような物を付けられるとよくわからないおじさんの話が始まった。
長い話を聞いている中、友美は姉に話し掛ける。
「ねぇお姉ちゃん、あんなことする必要は無いんだよ」
「だめ」
「気持ちはわかるよお姉ちゃん、でもお母さんはそれを望んでる。その道を選ぶって言ってくれてる。ならそれに答えよう?」
「だめ、わたしがきえる、おかあさんたすける」
「みんなも!お姉ちゃんがそうなる必要はないって思うよね!?」
突然友美は椅子から立ち上がるとその場にいるみんなに問い掛けた。
するとみんな「そうだそうだ」「一緒にいこう」等と肯定してくれる。
嬉しい。彼らはきっと自分のことを受け入れてくれる。歓迎してくれる。仲良くしてくれる。
しかし…
「だめ」
彼女はそれだけ言うと椅子から立ち上がり、体育館の出口へ向かう。
「…ありがとね」
そして体育館を後にする直前にまたぽつりと一言だけ呟くように言葉を残し、彼女はそこからいなくなった。
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