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つぎ つうがくろ
彼女は再び目を覚ます。
そこはまたあの肉の壁に囲まれた空間だった。温かくて、優しくて、大好きな人の空間。
出来る事なら、みんなの言う通りにしたい、そう彼女は心から思っている。
皆と歩み、皆と学び、皆と笑い。
しかし彼女にとってそれよりも…
「おかあさん、まってて」
自分のお母さんを助ける事が全てだ。それが叶うのなら…
彼女は歩き出す前に自分の両手を確認した。
少しだけ、彼女の存在が薄れるように半透明になっていた。
彼女は壁に近付く。
まるで彼女を拒むように少し時間を置いてから肉の壁にまためきょめきょと穴が現れた。
相変わらず真っ暗なその先に、彼女は少しも臆することなく進んで行く。
気が付くとそこは、初めて見る物ばかりだった。
やけに硬い黒っぽい床、ごつごつした背の高さ程の壁、てっぺんに黒い線が伸びているまたまたやたらと硬くて太い灰色の棒、その棒の横には何か刺さっているようでちょっと彼女には痛そうに見えた。
そしてやっぱりさっきと同じ様にぐちょぐちょとした物が所々にこびり付いており、全体的に赤黒くなっている。
「あそこにいく」
彼女は一本道の道の先を進んでいく。その先にはまたあの光のオーブが確認できた。
彼女は色んな物がある楽しげな道を、オーブに向かっててくてくと歩いていく。
そうしているとまためきょめきょと音を立てながら地面から何か生えてくる。先程の肉の人だ。
この前の広い場所とは違ってここは狭い、どうやったって軽い自分は捕まって戻されてしまうだろう。地形を生かした彼女を進ませない工夫が施されており、より彼女を進ませたくない、進んで欲しくない、このままでいて欲しいという強い意志、想いをひしひしと感じることが出来た。
試しに強引に突破しようとするが、やはり軽々とお姫様抱っこで持ち上げられて元の場所に戻されてしまった。
「ごめんね」
ここまでしてくれるのに、自分は彼らの意志に答えることが出来ない事から彼女は肉の人に思わず謝ってしまう。
しかしやっぱり彼女に諦める選択肢はない。
意を決したような顔をすると彼女は不意に諦めたように肉の人が封鎖する道に背を向け離れていく。
そして適当な曲がり角を曲がり、彼らから見えないであろう位置でちょっとだけ待機してからバッと彼らの様子を確認した!
「…もう」
しかし彼らはそれを完全に分かっていたようで、何食わぬ顔(顔は無いのだが)でそこで彼女の行く道を封鎖していた。
うーんと困った顔をする彼女。そこでさっき強行突破を試みようと進んだ時に見掛けた横の道を思い出した。
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