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「よし」
そう、彼女は横に続く道に入っていったのだ。
だが、肉の人達も勿論横道に入っていくのを確認しているので彼女が迂回して自分達の不意を突こうとしているのはバレバレである。肉の人達はすでに彼女を回り道で待ち構えていた。
「むー…」
自分の策がいとも容易く破られてしまいまたまた唸る彼女。完璧な策略だと思っていたので尚更困ってしまった。どうしてもあのオーブに触れなければいけないのに…。
とぼとぼと来た道を戻り、最初の位置まで戻る彼女。
「…あれ」
すると驚いたことに何故か肉の人達が道を塞いでいないのだ。
「いまのうち」
なぜかはわからなかったが好都合。自分は何とかしてあのオーブにたどり着かなければいけないのだから。一刻も早く。
彼女はオーブに向かって一直線に走り出す。
先程の位置で警戒を続けていたせいで進路を塞ぐには多少距離が開きすぎている肉の人達。彼女の行動と足音に気が付き一斉に道を塞ぎに掛かるが時既に遅し。
彼女はオーブに急いで手を突っ込んだ。
「お…ちゃん…お姉ちゃん!」
気が付くと彼女はまた黒くて硬い地面とごつごつの壁、やたらと硬くて太くて何か刺さっている棒が沢山ある空間で目を覚ました。さっきと比べるとやっぱりとても綺麗だ。ともみに身体を揺さぶられている、どうやら寝てしまっていたようだ。
「…いもうと」
「もーびっくりした~…突然帰り道で倒れるんだもん。眠かったの?」
「…そんなとこ」
しきりに愛おしい友美に身体は痛くないか等とやたらと聞かれた後、二人は歩き出す。
「お姉ちゃん!入学式面白かったね!あと先生も楽しそうでちょっと安心したかな…」
「にゅうがくしき?」
にゅうがくしき。
彼女にはそれが何なのか分からなかったが、楽しかったらしいのできっと友美にとって良いものなのだろう。
「それでさお姉ちゃん、私たちも晴れて今日から高校生ってことで~…あそこ!見て!」
友美は滅茶苦茶嬉しそうにとある建物を指差す。
彼女には勿論それが何なのかは分からなかったが、友美曰くコンビニというものらしい。名前は分かったがなんなのかよくわからない。
「高校生なので~買い食いというものをしてみたいと思いまーす!」
なんだかわからないが、友美が楽しそうだからきっと楽しいことなのだろう。そう確信した彼女…
「じゃあ夢華お姉ちゃんはどれにする?」
夢華は友美にされるがまま手を引かれ、その中へと入っていった。
そして数分後、二人の手には何かが握られていた。
なんだか白いのがぐるぐるしているよくわからない冷たい物。友美はこれをアイスクリームと言った。
「?」
「お姉ちゃん、これは食べ物だよ。こうやって食べるの!
あーやっぱバニラいい!さ、お姉ちゃんも!」
何もかもが分かっていないので容器を友美に開けてももらい、友美の言う通りにしてみる夢華。
「…つ!?!?」
それを口に運んだ瞬間、味わったことの無い冷たい感覚と心地のよい甘さが口に広がった。
それはあの空間のように甘く、優しい味わい。
「どう!夢華お姉ちゃん!」
「……おいしい」
「よかった~!さぁお姉ちゃん、そこの空き地でこれ食べたら帰ろっか」
そして二人は空き地へ。
可愛い友美が可愛い物を食べている、それだけで幸せなのに自分までそれを持っている。
こんなものを食べて良いなんてきっと自分はみんなの言う通り…
「夢華お姉ちゃん、これはちょっとしたことだけど、こんな風にお姉ちゃんがこの世界にいてくれたら楽しい事。幸せな事が沢山あるんだよ。それはなんでだと思う?」
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