葵~柚紀~

3/6
前へ
/72ページ
次へ
瑞紀と約束して1週間足らず 俺の前には、 「やあ!柚紀。待ってたよ」 あの人が居る 「……どうも。それじゃあ」 俺が、軽く挨拶をして立ち去ろうとすると、 「えっ?ちょっ待ってよ!お~い!」 車の中から叫んでくるが、あんだけ瑞紀に言われてて、のこのこ付いてく訳にはいかない バタン 車を降りて、俺を追いかけて来る 「なあ、ここさ駐禁だから、停めとくとヤバいんだよ」 「じゃあ、車動かした方がいいですよ」 「いや、だからさ、ちょっと聞きたい事あるから、一緒に乗ってよ」 「聞きたい事って?」 「瑞紀のピアノの事。なんかさ、外国行きの話とか聞いてない?」 え? 俺が立ち止まると、 「お、反応あり。何でもいいからさ、ちょっと話聞かせてよ」 この人…何か知ってるのかな? 「じゃあ…俺にも、知ってる事教えて下さい」 「オッケー、オッケー。はい、じゃあ乗って乗って~」 仕方ない… だって、絶対瑞紀教えてくれないもん 「あ、えっと~。俺は葵。瑞紀とずっとピアノ教室が一緒の、イケメン大学生。イケメンな上に優しいから、柚紀の行きたいとこ、連れてってあげるよ」 この人、自分でイケメンって言った… 「いえ、行きたいとこは特にないですけど…あの、外国行きの話って…」 「え~?行きたいとこないの?何処でもいいんだぞ?遊園地か?なんか食いたいか?海か?山か?高校生なんだから、行きたいとこ、いっぱいあるだろ」 この人の高校生のイメージって… 「いや、だから、特にないです。強いて言えば、ちょっとお腹空いてるけど……じゃなくて!瑞紀!瑞紀の外国の話!」 「ははっ。分かった、分かった。なんか食えるとこ探そうな。それまでは、そこのダッシュボードん中のお菓子、何でもいいから食っとけ」 この人… 全然話す気ない… 「話す気ないなら止めて下さい」 「んだよ、せっかちだな~。どっか入ってゆっくり話そうっていう、俺の優しさが分かんないかね~」 「瑞紀、外国行くって話聞いたんですか?」 「いや、行くのは俺なんだが…」 は? 「今まで、瑞紀からそういう話、聞いた事なかったか?」 「瑞紀は…そういう話全然しないから…。たまたまそういう話が出た時に、何度か先生に薦められてたって知った」 「ふ~ん?……で?」 「家族と離れて外国行って音楽の事学ぶのが、今の幸せだとは思えないから、迷った事は1度もないって……瑞紀は言ってた」 「へ~え?」 本心は分からないけど…… 「ねぇ、葵さん。やっぱお菓子食べていい?」 「ははっ、育ち盛りだからな。どうぞ」
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加