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瑞紀と約束して1週間足らず
俺の前には、
「やあ!柚紀。待ってたよ」
あの人が居る
「……どうも。それじゃあ」
俺が、軽く挨拶をして立ち去ろうとすると、
「えっ?ちょっ待ってよ!お~い!」
車の中から叫んでくるが、あんだけ瑞紀に言われてて、のこのこ付いてく訳にはいかない
バタン
車を降りて、俺を追いかけて来る
「なあ、ここさ駐禁だから、停めとくとヤバいんだよ」
「じゃあ、車動かした方がいいですよ」
「いや、だからさ、ちょっと聞きたい事あるから、一緒に乗ってよ」
「聞きたい事って?」
「瑞紀のピアノの事。なんかさ、外国行きの話とか聞いてない?」
え?
俺が立ち止まると、
「お、反応あり。何でもいいからさ、ちょっと話聞かせてよ」
この人…何か知ってるのかな?
「じゃあ…俺にも、知ってる事教えて下さい」
「オッケー、オッケー。はい、じゃあ乗って乗って~」
仕方ない…
だって、絶対瑞紀教えてくれないもん
「あ、えっと~。俺は葵。瑞紀とずっとピアノ教室が一緒の、イケメン大学生。イケメンな上に優しいから、柚紀の行きたいとこ、連れてってあげるよ」
この人、自分でイケメンって言った…
「いえ、行きたいとこは特にないですけど…あの、外国行きの話って…」
「え~?行きたいとこないの?何処でもいいんだぞ?遊園地か?なんか食いたいか?海か?山か?高校生なんだから、行きたいとこ、いっぱいあるだろ」
この人の高校生のイメージって…
「いや、だから、特にないです。強いて言えば、ちょっとお腹空いてるけど……じゃなくて!瑞紀!瑞紀の外国の話!」
「ははっ。分かった、分かった。なんか食えるとこ探そうな。それまでは、そこのダッシュボードん中のお菓子、何でもいいから食っとけ」
この人…
全然話す気ない…
「話す気ないなら止めて下さい」
「んだよ、せっかちだな~。どっか入ってゆっくり話そうっていう、俺の優しさが分かんないかね~」
「瑞紀、外国行くって話聞いたんですか?」
「いや、行くのは俺なんだが…」
は?
「今まで、瑞紀からそういう話、聞いた事なかったか?」
「瑞紀は…そういう話全然しないから…。たまたまそういう話が出た時に、何度か先生に薦められてたって知った」
「ふ~ん?……で?」
「家族と離れて外国行って音楽の事学ぶのが、今の幸せだとは思えないから、迷った事は1度もないって……瑞紀は言ってた」
「へ~え?」
本心は分からないけど……
「ねぇ、葵さん。やっぱお菓子食べていい?」
「ははっ、育ち盛りだからな。どうぞ」
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