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「はっ、ははっ。なんだ…柚紀、ぼーっとしてたのに、ちゃんと聞いてたんだな。そうだな…俺は、寂しかったのかもな。小さい時からずっと一緒に、同じものを見て進んできたと思ってたのに、そう思ってたのは俺だけで、お前は最初から別のものを見てて、同じ位だと思ってた実力は、全然同じじゃなくて…。だから、なんか、寂しくて……お前に構いたくなったのかもな。ははっ」
「ははっ。じゃない。お前がどう思ってたのかはどうでもいい。なんで最後に、そうなる?寂しくて構いたくなった?ガキか!それに、なんで俺じゃなく、ゆずなんだ?」
「ん~…あちゅい~…」
シャツを脱ごうとして…力尽きたか
「いやだってさ。たまたま買い物に行った時発見したお前達がさ、あまりにも仲良さそうで。人前で感情出さないお前が、優しそうに微笑んで、ちょっと柚紀が離れただけで、心配そうに探してるし、トイレ行くだけで何回も振り返って…。そうかと思うと、柚紀は、お前に言われたのか、まるで忠犬ハチ公かの様に、しゃがんだまま動かないし」
「……お前、あの時、わざとゆずの前で財布落としたんだな?」
「お前が俺を裏切って選んだ、溺愛する弟を知りたかったし、お前の知らない所でその弟が俺と会ってるって知ったら、お前どんな反応すんのかなぁと思ってさ」
こいつは…
全く成長していない
「……ったく。こんな事してる場合じゃないだろが。さっさと留学の準備しろ!お前ガキの頃から、なんも成長してないぞ!」
「うっ…酷い!幼少の頃の俺の心をズタズタにしただけでなく、今回も俺を裏切っておいて…」
「どっちもお前が勝手にそう思ってるだけだ。俺は別にあの時の夢を失くした訳じゃない。今はここに居る事が、俺にとっては、その夢に近付く事だと思うから居るだけだ。これから先の事は分からない」
「え?そうなの?そういう事?あっそう!なんだよ~。それならそうと早く言えよ~」
なんだこいつ……
相変わらず面倒臭い
「や~、なんかスッキリしたわ~。これで晴れ晴れとした気持ちで旅立てるわ!そっかぁ。俺達の夢忘れてた訳じゃなかったんだなぁ。じゃあな!」
「ちょっと待て!まだちゃんと聞いてないぞ?ゆずに何をした?」
「何って…だから、勝手に酒入りチョコ食って酔っ払って寝てたんだってば」
「それは分かった。お前、ゆずを何処に連れてったんだ?ゆずの左の鎖骨下にある痣は何だ?」
「ああ……あれはさあ、ほら…。あんな可愛い顔で制服脱ぎ出して、あんなとろ~んとした目で見られたらさぁ…なあ?」
「なあ?じゃねぇよ!お前、あとゆずに何した?さっさと白状しろ!」
「な…なんもしてないって。じゃあな!」
「あ、おい!…切りやがった」
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