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「おはよ~」
「あら、ゆずったら、昨日お風呂入らないで寝ちゃったでしょ?」
「ん~。今シャワー浴びて来る~」
「どうしたの?調子悪い?」
「なんか……ちょっと頭痛い」
「え?待って待って、シャワーの前にお熱…」
母さん…それ、二日酔い
とは言えない
どんだけ酒入ってたんだよ
いや、ゆずが、極端に酒に弱いのか?
「お熱はないようね?寒気とかない?」
「うん」
「一応、頭痛薬だけ飲んでおきましょう?」
「うん」
母さんが鎮痛剤を取りに行く
「ゆず、おはよう」
「ああ、瑞紀、おはよう」
「ゆずさ、なんか俺に言う事ないかな?」
「言う事?」
「俺との約束破って、葵の車乗って、どっか行ったよな?」
!
突然ゆずの目がシャキっとする
「あ…いや、それには色々と事情があって…」
「お前、昨日、何処連れてかれて、何されたの?」
「何処?なんか…山?何処なんだろ?俺、車に酔ったみたいで、話聞いてるうちに寝ちゃったんだよ」
「ゆず~。お水くんだから飲んで~」
「は~い」
「一応少し効いてきてからシャワー浴びたら?」
「ん~じゃ、そうする」
「…で?」
「え?何?」
「何?じゃない。事情ってなんだよ?山って何処だよ?」
「いや、葵さんがさ、瑞紀から外国行きの話とか聞いてないかって言うから。てっきり瑞紀が行くのかと思って…。山は何処だか知らない」
「ったくお前は…。俺は行く気ないって言ったろが!場所が分からないなら、葵にされた事は?何か覚えてるか?」
「された事?車にあったお菓子、何でも食べていいよって、食べさせてくれて…」
それに、酒が入ってたんだよ
「俺が具合悪くなってきたから、話途中だったのに、車停めて、シートベルト外して、椅子倒して寝かせてくれた。葵さんって、チャラそうに見えるけど、凄く優しい人だよね?」
「それから?」
「え?それから?俺が寝ちゃったから、そろそろ帰らないと家の人心配するんじゃないかって起こしてくれて、家まで車で送ってくれた。超いい人」
ダメだ……
肝心な部分が、スッポリ抜けてる
「そうか…じゃあ、もう、それでいい」
「?何の話?」
「何でもない…ゆずの馬鹿」
「え?何で!あっ!そう言えば、葵さん、もうすぐ外国行っちゃうって言ってたよ!当分会えなくなるし、なんか、色々瑞紀に言いたい事あるみたいだし、1度ちゃんと話してあげなよ」
「……昨日話したよ。お前が寝てる間に」
「えっ?そうなの?なら良かった。なんか、色々言ってたけど、結局瑞紀に、行ってこいって言って貰いたいのかなと思ったから」
なんだ……
ゆずの方が、よっぽど大人じゃん
「あいつ、ゆずよりずっと馬鹿だからな」
「なんだよ!馬鹿馬鹿言うなよな!」
「簡単な約束も守れないような弟だからな」
「うっ…だから、それは……あっ!なんか頭痛くなくなってきた。俺、シャワー浴びて来る!」
夢を叶える手段は皆同じじゃないんだよ
俺は今ここを離れたら、いい曲なんて書けないし、いい音なんて奏でられない
ゆずと会って話したんなら分かるだろ?
そのずっと先にある未来が一緒なら、それでいいだろ?葵……
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