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佐伯さん
「なぁなぁ、佐伯ってさ、大人しいから目立たないけど、けっこういいと思わない?」
「あ、それ、俺も思った!なんか、これからに期待!みたいな?」
クラスの奴らが話してるのが聞こえてきた
けっこう笑うようになったよな
俺は、中3の時も、佐伯と同じクラスだった
でも、実を言うと、その前から知っていた
いや、名前とかは知らなかったけど
時々見ていたのだ
「んっしょ、よし。佐伯、それも上にあげちゃっていいよ」
「大丈夫だよ。この位、私でも全然持てるよ」
「ほんと?ったく、教材多すぎ。自分で持って来いよなぁ」
「いつも全部使わないのにね?」
佐伯が、クスクスっと笑っている
「また同じクラスで、一緒に日直やるとは思わなかったな?」
「あ、うん。佐伯と神付って、近いもんね?」
「佐伯、前より笑うようになったよな?なんか嬉しい……。って、あ、なんかキモい?ごめん、聞かなかった事にして!」
「まさか!柚紀君にそう思って貰えたなら、凄く嬉しい。だって、もしそうなら、柚紀君のお陰だから…」
……え?
「うわ!柚紀、凄い荷物だな!優しい俺様が手伝ってやろう」
「うわ~。どれどれ手伝ってやるか」
聞き返そうとしたら、クラスの奴らが手伝いに来てくれた
「あ、ありがとう」
「絶対これ、半分位しか使わないのに、毎回俺らに運ばせんなよなぁ?」
「な?」
俺のお陰?
どういう事だろう?
「柚紀、日誌か~?じゃあな~」
「おお!また明日な~」
「え~と?今日の欠席は1人だけだったよな?」
「うん」
「伝達事項は特になしでいいよな?」
「うん」
「………佐伯さ、前より笑うようになったのが、俺のお陰って、どういう意味?」
「えっ?」
「あっ!話したくなかったら別にいいんだけど…ちょっと気になったからさ」
「…ううん。話、聞いてくれる?」
そう言って、佐伯は話し出してくれた
「私、元々凄い人見知りで…。中学入ったら、一気に知らない人達が増えて、なんか、小学生とは全然雰囲気も違うし、益々声掛けられなくて……。そのうち、仲良くなった子達で固まりだして…。あ、私は、あの中に入っちゃ駄目なんだと思ったり…。とにかく臆病になってて。別に、誰かに何か言われた訳じゃないのに、誰にも話し掛けないで、挨拶もしないで、目も合わせないで…私は愛想もなく、いつも1人で居たの」
知らなかった…
今よりずっと物静かだったし、あまり笑わなかったけど…
「そんなんだから、皆も私を遠ざけるようになったし、それで私はまた内に籠っちゃって……。中3の時も、1ヶ月位経って、そろそろまた孤立しちゃうんだろうなって思ってた」
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