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序章
少女は雪山で一人、ただ歩き続けている。少し先も見えないくらいの吹雪の中、薄着で。
追われていたのだ。兵隊は、一万はいるだろうか。まだ12歳の少女に対して本気で追っている。
「人間」ではなかったからだ。本当はもっと前に死んでいる筈だった。一族は皆殺されて、この少女だけが生き残った。少女の名前は「宵夢(ユメ)」。一族の最後の希望だった。
何でこんな事になったのだろう。今までにそんな兆候は見られなかったのに。
普通だけど、幸せな生活を送っていた。天使のような羽があったり、特殊な力をもっていたりしたから、「人間」から疎まれていたのは知っていたけど、それでも何も無かった。
兵隊達は、この寒さに耐えられないだろう。厚着をしている筈だ。皮肉にも少女は特殊体質だったおかげで歩き続けられる。このまま逃げ続けていれば追いつかれない。
だが、歩き続けるのも限界が来ていた。
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