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シマナミの視線が、天井に向く。
何か察したように天井の一角がサッと外され、スルスルと糸のようなものが松風の頭上に降りてくる。
シマナミに馬乗りになっている松風はまったく気づいていない。
鼻息荒く、シマナミの腰紐を解こうと躍起になっている。
「ワシは金も力もある。ワシが嫌か?」
と抵抗するシマナミに松風が言った。
シマナミは松風を見つめ
「香桜さまのお気持ちを想うと心苦しいのでございます。松風さまの事を嫌うオナゴなど、この世におりましょうか」
と、松風の首にその細い腕を回した。
「おお・・・なんと健気な・・・」
と、松風はシマナミをギュッと抱きしめた。
天井から下がっている糸の先がシマナミの手に届いた。糸の先は人の頭がスッポリとおさまるくらいの輪になっていた。
シマナミは松風に気づかれないように、その糸の輪を引き寄せ、自分の身体に抱きついている松風の頭に掛けて喉元まで引き下ろす。すると糸が天井までピンと張り、一気に首を締め上げた。
「ヴ、ヴゥッ・・・」
松風が首に食い込んだ糸を両手で剥がそうとするが、あまりの食い込みの深さに指が入り込む隙間がない。
シマナミが、畳の上をのたうち回る松風から離れた。
「ヴェッ、ガロッウウッ・・・」
香桜、と呼んでいるのだろう。
松風の身体が天井に引っ張られるように徐々に上がり、爪先が宙に浮いていく。
両足がバタバタと前後にせわしなく動く。
それから5分としないうちに、暴れていた両足が静かになった。
天井の四角い穴から好光がヌッと顔を出し、言った。
「ここは拙者が片付ける。シマナミは香桜さまのもとへ」
「はい。では、のちほど」
と、シマナミは部屋を出た。
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