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ダンジョン攻略に来たんだけど、扉を開けると雪国部屋だった。 この異世界のダンジョンは地下階層ではなくて、扉を開けて入っていく部屋タイプなのだ。 雪国ダンジョンなのに、みるくさんに「服を全て脱いでください。靴も」と言われた。 防御魔法が使えない俺はモンスターと戦うと服が破れるし、雪の中は運動靴では動きにくいよねって。 いや、俺は全裸でモンスターと戦うの? 他のパーティーがいるかもしれないのに? そもそも、素っ裸でダンジョン攻略していいのか? 法律に反したりしないの? 「みるくさん」 「はい」 「せめて、パンツくらいは」 「どうせ破れるかもですけど」 「……パンツが破れない付与魔法、パンツにかけれない?」 「なるほど、付与魔法ですか」 「うん」 「全ての服は無理ですけどパンツ1枚なら」 「お願いします」 「はい」 パンツが破れない付与魔法をかけてもらった。 トランクスタイプのパンツだから、見ようによってはボクサーに見えなくもないかも。 どうせ俺は殴る蹴るくらいしかできないし、キックボクサーだと思うことにするか。 あ、俺の武器はないのかな。 「氷狩さんの武器はその筋肉です」 「あ、うん」   まあ、不器用な俺に剣や弓とか使えないもんな。 しかし、プラス家電の魔法使いたちは家電に付与魔法をかけていた。 「あのさ、俺の上着やズボンとか靴とかにも付与魔法をかけれないの?」 「家電と服は違います」 「うん」 それはそうだけど。 「家電は基本的に身体に着けませんが、服は身体に着ますよね」 「うん」 まあ、炊飯器やテレビ、エアコンなんて着たりしない。 「身体が触れていると、どうしてか付与魔法の効果が切れるのです」 「へえー」 「なので、身に着けたり手に持つ物には、常に付与魔法をかけてないといけません」 「ふむふむ」 「そして、常時魔法を付与できる対象物は1つだけなのです」 「1つだから、パンツだけ」 「はい」 なるほど。よく分かった。 まあ、素っ裸よりはいいか。 こうして俺はトランクス1つでモンスターと戦うことになった。 「モンスター、襲ってこないね」 「扉から10メートルくらいはセーフティゾーンなので」 「なるほど」 「とにかく氷狩さんは襲ってくる相手を殴ってください」 「うん」 まあ、それくらいしか俺はできないし。 回し蹴りとか、そんな器用なことはできないし。 あれ? 「みるくさん」 「はい」 「防御魔法で俺を守ってくれないの?」 「それだと私が攻撃ができません」 「なるほど」 それはそうか。 「それはそうと、みるくさんは寒くない?」 みるくさん、雪国にしては薄着なんだけど。 「防御魔法を使ってますので」 「そっか」 そうか、自らには防御魔法をかけながら攻撃魔法も使えるのか。 そして、寒さも魔法で防御できるのな。 「さて、モンスターを倒さないとお宝もゲットできません」 「だよね。行こうか」 「その前に自己暗示をしてください」 「え?」 「俺の筋肉はモンスターなんかに負けないぞ、みたいな」  「あ、うん」 自己暗示したら俺の筋肉はモンスターに負けなくなるのだろうか。 扉から離れる俺とみるくさん。 セーフティゾーンから出たのか、モンスターが襲ってきた。 あれ、モンスターだよな? 見た目は雪だるまだけど。 「痛っ」 いや、自己暗示したからなのか、雪だるまの攻撃はまったく痛くないけど。 雪だるまが何かをぶつけてきた。 雪玉? いや、雪玉というか、雪氷? これ、たぶん氷の球だよな。 プロ野球のピッチャーが投げるより速くない? いや、プロ野球のピッチャーが投げる球なんて打ったことないけど。 「被弾時の時速は300キロを超えてます」 「ええっ?」 俺、時速300キロを超える氷玉をぶつけられてるの? まあ、まったく痛くないけど。 「氷狩さんが倒します?」 「えっと……お願いします」 「はい。ファイヤーボール」 雪だるまモンスターはみるくさんのファイヤーボールで溶けてしまった。 「ドロップしませんでしたね」 「そうなの?」 「はい」 雪だるまモンスターを倒したが、お宝には変化しなかったようだ。 まあ、初戦だしな。 でも、次が襲ってこない。 「モンスターには持ち場があるようで、ここから離れないと次のモンスターには会えません」 「なるほどね」 モンスターにも持ち場というか縄張りみたいなのがあるんだな。 右側に50メートルくらい移動すると、白いオオカミみたいなのが襲ってきた。   体高2メートルくらいあるけど、見た目はオオカミだ。   「流石に上級ダンジョンの犬は大きいですね」 「あれ、犬なの?」 「はい。こんどは氷狩さん、お願いします」 「俺?」 「はい」 「俺があの大きなオオカミみたいなのを倒すの?」 「はい」 「……うん」 ここで逃げたら男がすたるか。 俺はみるくさんの前に立つ。 襲ってくる雪オオカミ(仮名) 正式名称は何なのか。 とりあえず、適当に殴ってみるか。 適当にパンチを繰り出すと、タイミングよくカウンターで雪オオカミの頭に当たったようだ。 パン! 「えっ?」 雪オオカミの頭が吹き飛んだ? 雪オオカミの大きな身体が消え、何かが雪の上に落ちた。 拾ったら、野球ボールくらいの大きさをした虹色の球だ。 「何だ、これ?」 もしかして、国宝級のお宝とか。 いや、まさかな。 「氷狩さん」 「うん?」 「それ、超レアのお宝ですよ」 「そうなの?」 「はい」 国宝級? 「開くとくじが入ってます」 「これ、開くの?」 「はい、ガチャポンみたいに」 「なるほど」 くじってことは、宝くじみたいな?   パカッと開いた虹色の球の中には何やら紙のような物が。 何か書いてある。 「えっと、読めない」 俺、こっちの世界の文字は読めないんだよね。 まあ、英語とかもほとんど読めないけど。 読んでくれるみるくさん。 「スキルを1つだけ、100万倍……」 「うん?」 「凄いですよ。超ウルトラ激レアですよ、これ」 「そうなの?」 「はい」 スキル100万倍って、確かに凄そうだけど。
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