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ダンジョンで俺が初めて倒したモンスターからお宝がドロップした。 どうやら、スキルが1つだけ100万倍になるお宝らしい。 俺にはスキルなんてないし、スキル持ちにならすごく高く売れそうだな。 なんせ、スキルが100万倍になるんだし。 みるくさんは「超ウルトラ激レアです」と言ってたし。 「氷狩さん、ステータスオープンしてください」 「え? どうやって?」 「ステータスオープンと言えばステータスボードが出るかも、です」 「そうなの?」 「可能性はあります」 その可能性は何%くらい? 「分かった」 俺は右手を前に出した。 ステータスオープンするのにそんなポーズは不要かもしれないけど。 いや、おそらく不要だろう。 「ステータスオープン、おおっ!?」 眼の前の右手の前の空間に何やらテレビ画面のような物が現れた。 「出ましたね」 「普通は出ないの?」 「スキルがあるなら出せます」 「みるくさんは?」 「出せますけど」 と、言うことは、みるくさんはスキル持ちなんだよな。 特級魔法使いだし、当たり前なのか。 魔法というスキル? で、俺のステータスはどうなの? こっちの世界の文字らしく俺にはまったく読めないんだけど。 「筋肉」 「え?」 「氷狩さんのスキルは筋肉だけです」 「はい? きんにくって、この筋肉?」   二の腕に力こぶをつくる。 「その筋肉です」 「ふむ」 どういうこと? 筋肉がスキル? そもそも、この世界のスキルにどんな種類があるのか俺は知らないけど。 「スキルが1つだけの人も多いですよ」 「そうなんだ」 まあ、それは良いとして筋肉スキルって何だ? 「スキルが1つだけ100万倍って、俺の筋肉が100万倍になるってこと?」 「そうですね」 筋肉が100万倍って、体重が100万倍の巨人になるのでは。 「えっと……これは、みるくさんが使う?」 「もう使用済みですよ」 「え?」 「レインボールは開いた人にしか効果ありませんから」 「あ、俺が開けた。レインボール?」 「はい」 この球、レインボールと言うのか。虹色の球だからレインボールね。   正確にはレインボーボールだろうけど、縮めてレインボールか。 でも、使用済み? 俺、まったく身体が大きくなったとかないけど。 「氷狩さん、これ」 「え?」 何やら金属の塊を渡された。 「とても硬い金属です」 「ずっしりと重いね」 見るからに硬そうだ。 「握りつぶしてください」 「いや、無理だよ」 「握りつぶせると思って握ってください」 「うん、え?」 俺が握ると硬い金属は粉々になった。 これ、本当はとても柔らかい金属じゃないの? 柔らかい金属ってあるのか知らんけど。 「流石は筋肉100万倍ですね」 「あ、うん」 本当に硬い金属だったのか? 「今日は帰りましょう」 「え?」 セーフティゾーンでみるくさんが俺の服を空間収納から出してくれた。 「はい」 「ありがとう」 服を着る。 「扉を開けてください」  「えっと、8時間は開かないんだよね?」 まだ2時間もたってないはず。 「時間までは誰も開けることはできません」 「うん」 「これまでは」 「え?」 「今の氷狩さんなら開けれると思います」 「そう?」 「筋肉100万倍ですから」 「う、うん」 開かず(8時間は)の扉を開けてみた。 扉は開いた。 「開きましたね」 「開いたね」 「流石は筋肉100万倍ですね」 「うん」 でも、どうしてこんなに早くダンジョンから出るの? せっかくゲットした超ウルトラ激レアのお宝は俺が使ってしまったし。 今日の稼ぎは赤字になるよね。ダンジョン入場料を払ってるから。 そう、ダンジョンに入るには入場料を取られるのだ。 まさに危険なテーマパークだよな。 「ちょっとですね、落ち着いて今後の筋肉について考えたいので」 「え? こんごの筋肉について?」 「はい」 国のコンゴじゃないよな。コンゴ共和国の筋肉って意味不明だし。   今後の筋肉について、だよな。 ダンジョン前の広場で空間収納からコンテナハウスを出したみるくさん。 その中へ入るみるくさん。俺も入る。 みるくさんはコーヒーを入れてくれた。 「どうぞ」 「ありがとう」 相変わらず、みるくさんの淹れてくれたコーヒーは美味しい。 しかし、こちらの世界にコーヒーはない。 みるくさんの空間収納にストックしてあるコーヒーを大事に飲まないといけないから、コーヒーは滅多に飲まないのだ。 そして、コーヒーを飲むということは大事な話があるということだ。 「もしかしたら」 「ら?」 「氷狩さんの筋肉で地球を救えるかも」 「地球を?」 「そう」 「俺の筋肉で?」 「はい」 それ、俺が地球を侵略してきた巨大宇宙戦艦やロボットを倒せるってこと? 光速を超えて動ける会長さんでも戦闘を諦めたのに。 「あの会長さんでも諦めたのに?」 「会長は速さだけで筋肉は普通なので」 「でも、俺は速さはないけど」 「速さも手に入れましょう」 「え?」 「光速を超える筋肉を」 「ん?」 俺の頭脳でも分かるように、みるくさんが説明してくれた。 「光速は時速11億キロくらいです」 「へえー」 秒速3万キロくらいだったかな。時速にしたら11億キロくらいになるのか。 「これまでの氷狩さんが時速30キロで走れたとして、今は時速3000万キロで走れます」 「そうなの?」 「筋肉100万倍なので、単純計算をすると」  「うん」 「スキル100倍のレインボールをゲットすれば、余裕で光速を超えます」 「えっと……時速30億キロで走れると」 「はい」 そうなるのか? しかし、そう運良くレインボールがゲットできるものなのか。 それとも、どこかで売ってる? 「レインボールはゲットした人が使うか、もしくは王族とかが買い占めるので」 「だよね」 普通には買えないよな。 すごく高いだろうし。 「でも、何年か頑張ればゲットできるかも」 「何年かって、そんな時間がすぎたら地球は」 「忘れました?」 「え?」 「この世界の1年間は地球の1時間です」 「あ、そうだった」  「はい」 あ、でも、会長さんに地球へ連れて行ってもらえば。 「どちらにしても、筋肉100万倍でもあの宇宙戦艦やロボットには勝てないと思います」 「あ、そうか」 筋肉1億倍になる必要があるってことか。 これは頑張ってスキル100倍以上のレインボールをゲットしなければ。 10年かかってゲットしても、地球時間は10時間しか進んでない。 たぶん、それなら俺の両親は無事だろう。 他の惑星に奴隷として連れて行かれているかもだけど。  
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