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家電量販店大手のプラス家電(株)
そこの特別会員に俺は特別になれたらしい。
何やらプラス家電(株)の規定を俺がクリアしたから、らしいけど、その規定は企業秘密らしく教えてもらえなかった。
この1年間、プラス家電の営業日に俺が毎日来店したからなのか?
それくらいしか思いつかないけど。
で、俺の担当に専属でなってくれるのは美人な佐藤さんらしい。
なんせ、特別会員の入会費が1億円で年会費は1000万円だ。
これくらいの超絶美人さんが専属で俺の担当になるのも納得できるかも。
佐藤さん、名刺とかくれないのな。佐藤さんが休みの日もあるだろうし、佐藤さんに連絡したい時はこの店舗に電話したらいいのか?
佐藤さん以外の人から家電を購入するのも何だかだし。
「すみません、私が所属するプラス家電魔法部は秘密の部署なので、名刺はありません」
「え?」
「加藤様が私の名刺を欲しいようでしたので」
え? 俺、口に出してた?
「2人きりでこの距離でしたら、多少は心が読めます」
「あ、なるほ……ど」
え? マジで俺の心を読んだ?
いや、まさかな。たまたまだろ。
部屋がノックされ、スーツ姿の男性が入ってきた。
「大葉銀行の三井です、大変お待たせいたしました」
「あ、いえ」
名刺を渡された。
大葉銀行、俺の金の半分以上を貯金しているメインバンクだな。
ほう、三井さんは本店営業部の部長さんなのか。
日本で最大手の大葉銀行の本店営業部の部長って、かなりすごい人なのでは。
「佐藤様、こちらでよろしいでしょうか」
大葉銀行の三井さんが書類を佐藤さんに手渡した。
「はい、大丈夫です。加藤様、こちらにサインをお願いいたします」
「あ、はい」
佐藤さんに書類を渡された。
ふむふむ。この書類にサインしたら、俺が特別会員の間は俺とプラス家電とのお金のやり取りを、大葉銀行が自動でよしなにやってくれるのか。
流石はプラス家電(株)の特別会員だ。こんなサービスもあるんだな。
まあ、日本で最大手の大葉銀行だ。詐欺ではないだろうし。
俺は書類にサイン……。
いや、待てよ。またピカッと光るのでは。
俺はサインした瞬間に目を閉じた。
なので、ピカッとしたのかはわからない。が、目を開けると俺がサインした書類は消えていた。
「加藤様、佐藤様、それでは失礼いたします」
「あ、はい。ありがとうございました」
俺と佐藤さんにぺこぺこして、日本最大手銀行の本店営業部の部長さんは帰っていった。
これ、何かのドッキリなのか?
10億円くらいしか持ってない無職の俺に、日本最大手銀行の本店営業部の部長がこんなにぺこぺこするわけがない、と思うのだが。
それとも、佐藤さんが俺が思うより凄い人なのだろうか。
さて、俺も帰る……いや、俺はここに家電を買いに来たのだ。
忘れて帰るところだったぞ。
「加藤様、商談の前にコーヒーでも」
「あ、ありがとうございます」
そういえば喉が乾いたな。
「魔法でコーヒーを出すと一瞬なのですが」
「え?」
「魔法で出すコーヒーは、残念ながら味に深みがないのです」
「……なるほど」
「加藤様にそのようなコーヒーをお出しするわけにも。少しだけお待ち下さい」
「はあ」
どうやら佐藤さんは魔法を使わないでコーヒーを淹れてくれるようだ。
テーブルの上にコーヒーを淹れる道具とかを出す佐藤さん。
……どこから出してるの?
佐藤さん、マジシャン?
あ、そうだ。
「あの、砂糖、ミルクは不要です」
「えええっ!?」
「えっ?」
そんなにびっくりする?
いや、そんな死にそうな顔をしなくても。
「あ、申し訳ございません。私を全否定されたように聞こえたもので」
「はい?」
「私の名前は佐藤みるく、なので」
「佐藤、みるくさん?」
「はい。本当は平仮名で『くるみ』でしたが、父親が出生届に『みるく』と書き間違えたようで」
「なるほど」
くるみ、みるくか。
逆から読むと、みるくがくるみなのな。
「なので、砂糖とミルクが不要ですと言われたら」
「確かに」
「それも、よりによって砂糖が大好きそうな加藤さんに」
「いや、俺はコーヒーに砂糖を入れるのが大好きな加糖さんじゃないから」
「そうですね」
佐藤さんが淹れてくれたコーヒーはとても美味しかった。
眼の前の空間のどこかにコーヒーを淹れる道具とかを片付ける佐藤さん。
どこに入れてるのだろうか。
プラス家電特別会員は1年更新だと誓約書に書いていた。
まあ、1年間なら入会費と年会費で1億1000万円だ。まだ9億円以上は残るし、1年くらいはこんな経験をしてもいいかと。
いや、3年くらいは特別会員でもいいかな。
「加藤様、3年間だと3億3000万円となりますが」
「え?」
「1年更新毎に入会費の1億円が必要なので」
「……なるほど」
そういうからくりなのか。
「しかし、私を上手く使えば簡単に元は取れるかと」
「え?」
「私、こう見えて特級魔法使いなので」
「あ、うん」
とっきゅうって、特級だよな? それ、どれくらい凄いのだろうか。魔法使いの基準とか知らないし。
「何と言っても、私は最高峰の魔法学園と言われるイグール魔法学園を首席卒業しましたからね」
「へー、それ、どこの国にあるの?」
「イグール王国です」
「イグール王国?」
そんな国、あったか?
「もちろん、異世界の王国ですよ」
「へ、へー」
あかん、完全に佐藤さんは中二病らしい。
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