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「やっと会えたな」
ん? 今の日本語だよな。
ダンジョンのモンスターステージで、別の冒険者パーティーが日本語で声をかけてきたのだ。
みるくさんの知り合いかな。
「こんにちは」
そんな俺の挨拶は声をかけてきた若い男に無視された。
「おいおい、佐藤さん。俺を無視するなよ」
やはり、男はみるくさんの知り合いのようだ。
まあ、この異世界にいる日本人なら、プラス家電株式会社に所属していた魔法使いだろうし。
しかし、みるくさんは男を無視する。
仲は悪いのか?
「佐藤さん、耳が悪くなったのかしら。顔もスタイルも悪いしね」
男と同じパーティーらしい女性が言った。
日本語だから、この女性も日本人だろうな。
しかし、顔もスタイルも悪い? それ、みるくさんのことではないな。
自慢ではないが、みるくさんは凄い美人でスタイル抜群だし。
じゃあ、あの人たちは誰に声をかけているのだ?
「みるくさん、あの人たちは誰に声をかけてるんだろうね」
「さあ?」
首を傾げるみるくさん。
「ふん、無視できるのも今のうちだぞ。俺はスキル10倍のレインボールをゲットして催眠魔法スキルを10倍にした。君にでさえ簡単に催眠をかけれるからな」
と、ドヤ顔の若い男が言った。
若いと言っても俺より年上みたいだけど、30歳にはなってないだろう。
ん? 催眠魔法スキル10倍? それ、やばくない?
「さっきから佐藤さんと言ってますが、ここに佐藤さんはいないと思いますけど
やっと、みるくさんが男に対応した。
「ふっ、君の名前は佐藤みるくだろ」
「いえ、加藤みるくです」
「あ?」
「加藤氷狩さんと結婚したので、私の名前は加藤みるくです」
「ふざけんな! 俺はそんな結婚は許さん!」
いや、あんたの許可が必要なのか?
「そうですか。でも、どうして問答無用で私に催眠魔法をかけてないのかしら」
「うっ……」
「催眠魔法スキル10倍でも、特級魔法使いの私に催眠をかけるには、私に数秒くらい触るとか私の目を数秒間は直視するとかしないと無理よね」
「ぐっ……」
そうか、だからみるくさんはあの男のほうを見ないのか。
「しかたない、無理やりなことはしたくなかったが。林さん、俺と一緒に佐藤さんを拘束してくれ」
「ちゃんと報酬は払ってよ」
「分かっている」
「あのパンツ1枚の変態男は?」
「変態野郎は俺が先に殺すから、佐藤さんの攻撃を防御してくれ」
「はいはい」
相手はそんな会話をしているが。
無理やりなことはしたくなかったが?
そもそも催眠魔法でみるくさんに何かするつもりだったよな。
しかし、特級魔法使いのみるくさんを拘束する?
あの2人、そんなに強いのか?
そして、パンツ1枚の変態野郎?
それ、俺のことか?
「あの2人は特級魔法使いです」
「やはり」
「そして、氷狩さんは変態ではありません」
「うん、ありがとう」
俺をパンツ1枚にさせてるのはみるくさんだしね。
服が汚れたり破けるのを防ぐ意味もあるけど、躍動する俺の筋肉を見たいのもあるようだ。
いやいや、特級魔法使いが2人って、みるくさんは勝てるのか?
「とりあえず、氷狩さんはあの男を殴ってください」
「特級魔法使いを、殴る?」
「はい」
「殴れるの?」
「今の氷狩さんなら簡単ですよ」
「でも、防御魔法とか使われたら」
「氷狩さんは防御魔法なんて無効化できます」
「防御魔法も無効に?」
「はい」
「でも、俺が殴ったら死んだりしない?」
「半殺しなら治癒魔法やポーションとかで死にません」
「う、うん」
それ、半殺しくらいで殴れってことだよね。
男が攻撃してきた。
が、まったく痛くもない。
「何だと? 特級魔法使いの俺の攻撃魔法が効かない?」
驚く男。
「効果10倍になった俺の催眠魔法も効かない、だと?」
とりあえず、殴ってみるか。
半殺しくらいにしたいと思いながら、とりあえず殴ってみた。
男は何回転もしながらはるか遠くへ飛んでいった。
死んでないよな?
さて、みるくさんは。
女魔法使いの攻撃を防御していた。
あの女のほうが強いのだろうか。
とりあえず、女を殴るのは気が引けるけど。
女魔法使いも殴ってみた。
女魔法使いも何回転もしながらはるか遠くへ飛んでいった。
「氷狩さん、ありがとう」
「いや。あの女魔法使いのほうが強かったの?」
「攻撃魔法は私より」
「なるほど」
みるくさん、一番得意な魔法は空間魔法だと言ってたもんな。
「あの2人、ダンジョンの外でも襲ってこないかな」
「冒険者ギルドに報告して逮捕してもらいます」
「逮捕? 特級魔法使いを逮捕できるって、特級魔法使いくらいだよね」
逮捕に協力してくれる特級魔法使いって、たくさんいるのだろか。
冒険者ギルドからの要請なら断れないのかな。
「魔法を無効化できるギルド職員とかもいますから」
「魔法が効かないギルド職員?」
「氷狩さんみたいにまったく魔力のない人は、武術を極めたりするので」
「あ、まったく魔力がなくて魔法を無効化できる剣や武術の達人なら、特級魔法使いも倒せるのか」
「剣は無理ですね」
「え?」
「剣は無機物なので、魔法で防御されます」
「なるほど。じゃあ、空手とかの体術?」
「はい。私でも魔力をまったく持ってない体術の達人とやり合えば簡単にボコボコにされます」
「へー」
特級魔法使いよりも、魔力をまったく持ってない体術の達人のほうが強いのか。
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