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ダンジョン攻略中に俺が所属するパーティーに声をかけてきた男女2人組は、みるくさんの元同僚の特級魔法使いたちだった。 まあ、パーティーと言ってもメンバーは俺とみるくさんだけ。 どうしてか俺を殺そうとしてきたり、みるくさんを捕らえようと攻撃をしてきたりしたので、俺がとりあえず殴って撃退した。 どうやら俺は魔法を無効化できるようで、特級魔法使いの魔法も俺には効かないようなのだ。 ダンジョンから出て、ダンジョン前広場でみるくさんが出したプレハブ小屋に入る。 「コーヒーでも飲みましょう」 「うん」 みるくさんの淹れてくれるコーヒーはとても美味しいのだ。 「あの2人、死んでないよね?」 「死んでないと思います」 「なら、いいけど」 俺に殴られて100メートルくらい飛んでいったし、ピクリともしてなかったけど。 普通、人間がトラックに当たって100メートル飛ばされたら死ぬよね? まあ、死んでても俺は正当防衛だけど。 いや、過剰防衛になるのか? 「あの2人、殴られた瞬間に防御魔法を自動で使っていたと思いますよ」 「そうなの? 俺には防御魔法は無効なんだよね? それに何回転もしながら100メートルくらい吹っ飛んだけど」 「防御魔法が効かないから氷狩さんのパンチはヒットしたわけです」 「ん?」 防御魔法を自動で使っていたのに、俺のパンチが当たった? 「防御魔法はダメージ低減や自身を回復させたり治癒することもできます」 「んん?」 どういうこと? 「ようするに、自動で氷狩さんのパンチの衝撃を回転エネルギーに変えて後ろに飛びながらダメージを減らし、自動で治癒していたんです」 「へえー」 そんなことが自動でできるなんて便利だな。 「あれでも特級ですから、それくらいはできますますよ」 「ふーん。だとすると、治癒魔法って防御魔法の一部なんだね」 「少し違いますね」 「ん?」 「防御魔法で治せるのは自分自身だけなので」 「あ、他人を治す治癒魔法とは別なんだね」 「そうですね。防御魔法に付随する自己回復機能と言いますか」 「なるほど」 「A級以上の防御魔法でないと、自動で行使できないと思いますけど」 「ふむふむ」 「あの2人は筋肉や内臓とかボロボロになったと思うので、少なくともあと1時間はまともに動けないはずです」 「う、うん」 「氷狩さんの筋肉はとても優秀なので、ちょうど良い半殺しにしましたね」 「え?」 いや、意味不明だ。 「氷狩さんのステータスを見ましたが、氷狩さんのスキル【筋肉】は意識的に、無意識でも筋肉出力をちょうど良い塩梅に調整できるようです」 「そうなの?」 「はい」 そうなのか。俺のステータスはこっちの世界の文字だったから俺は読めなかったのだ。 「あいつら、みるくさんを拘束して催眠魔法をかけて何をするつもりだったのかな」 「男のほうはエッチなことでしょうね」 「やっぱり。で、あの女は、みるくさんに恨みでもあるの?」 「私があの女より若くて美人でスタイルがいいので」 「なるほど」 女の嫉妬か。困ったもんだ。 「冒険者ギルドへ行きましょう」 「うん」 ダンジョンで別のパーティーに襲われたことを冒険者ギルドへ報告に行くのだ。 「あ、でも、証拠は」 録音や録画とかしてないし、目撃者はいないし。 「王都の冒険者ギルドなら職員にA級以上の鑑定魔法使いがいるので、私たちが嘘を言っているかいないか鑑定してくれます」 「へー」 そんなことができるんだ。 逆に、俺たちが死んでいたら死人に口なしってことなのか。 「鑑定料金は高いですけどね」 「あ、鑑定料金がいるんだね」 「他にもいろいろ手数料とか高いですし、冒険者ギルド職員は高給取りです」 「既得権益ってやつか」 「そうですね」 イグール王国の王都にある冒険者ギルド本部へ。 鑑定料金を支払い、みるくさんの証言に嘘がないか調べてもらう。 俺はこっちの世界の言葉はまったく話せないし分からないから見てるだけ。 まったくというか、挨拶とかの言葉は少しは分かるけど。 鑑定魔法使いらしき人が、みるくさんの頭を触っている。 もしかしたら、みるくさんの記憶を読んでいるのか? まあ、言葉より映像のほうが証拠として確かだよな。 みるくさんは書類に何やら書いて席を立った。 終わったのだろうか。 「どうだった?」 「あの2人、殺人未遂容疑で指名手配されます」  「殺人未遂?」  「はい。S級の私はともかくF級の氷狩さんを特級魔法使いが魔法を使って攻撃したので、完全に殺人未遂です」 「なるほど。頭を触られてたのは」 「私の見た記憶を映像として共有したんです」 やっぱり。 「そんなことができるんだね」 「A級以上の鑑定魔法が得意な魔法使いならですね」 「便利だね、鑑定魔法」  「私は使えないので残念です」 「鑑定魔法とかもスキルなの?」 「はい。私は鑑定魔法スキルはないので鑑定魔法は使えません」 「なるほど」 【魔法】がスキルじゃなくて、【攻撃魔法】【空間魔法】【鑑定魔法】とかのスキル種類があるんだな。 俺のスキルは【筋肉】だけど、目が良い【目】スキルとか、耳が良い【耳】スキルとかあるのだろうか。 ん? 俺の骨や皮膚とかは筋肉じゃないよな? 筋肉が100万倍になったけど、筋肉と一緒に動く骨や皮膚とか大丈夫なのか? 今のところは何ともないけど。 「心配無用です」 「え?」 「氷狩さんの筋肉はとてもとても優秀なので、筋肉を使う瞬間は筋肉出力に耐えれるように身体の全てを強化しています」 「そうなの?」 「ステータスに書いてました」 「へえー」 なんて俺の筋肉は優秀なんだ。
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