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8
老舗中華店の龍さんで大盛りラーメンチャーハンセットを食べて自宅へ。
趣味の1つであるネットサーフィンをしていた。
あ、そうだ。
ふと気になり、プラ電会長のことを検索してみた。
「あれ?」
検索して出てくる会長の顔が、本社ビルで会った会長の顔と明らかに違っている。
ネットの画像の江藤会長は50歳くらいのナイスミドルだ。
どういうことだ?
「それは、会長の影武者ゴーレムです」
「え?」
佐藤さんが何やら分けのわからないようなことを。
かげむしゃって、影武者だよな?
影武者は本人にそっくりだから影武者なわけで。
この影武者はまったくの別人だ。
そして、ゴーレム?
「異世界の魔法使いに作ってもらったそうですよ」
「異世界の」
「はい」
「佐藤さんは作れないの?」
「あいにくと、そっち系の魔法は得意ではなく」
「はあ」
何が得意なのだろう。
「会長の影武者ゴーレムは人間みたいに違和感なく老いていきます。それほどのゴーレム、ゴーレム作り専門50年以上の魔法使いでもかなり苦労して完成したそうです」
「なるほど」
影武者ゴーレムか。お高いんだろうな。
「それに、採取がかなり難しい素材が複数必要らしく、あれだけのゴーレムに必要な素材を揃えるには、会長でなければ100年は必要だろうと」
「へえー」
普通の人なら影武者が完成する前に死んでしまうな。
こんな企業秘密?を知ってしまい、俺は消されたりしないのだろうか。
「誰かに話しても笑われるだけですよ」
「うん。まあ、そうだね」
誰も信じないか、影武者ゴーレムなんて。
本物の会長、会長室にいたけど誰も怪しまないのか?
「本物の会長を知っているのは特級魔法使いの3人だけです。会長室に入れるのは特級魔法使いだけなので」
「へえー、そうなんだ」
それから佐藤さんと一緒にお風呂に入り、風呂上がりに少しだけエッチなことをした。
佐藤さんは俺のことが……俺の筋肉が好きなようだし、お願いしたら本格的なエッチもしてくれるかもだけど、俺と佐藤さんは知り合って2日目なのだ。
長いこと一緒に生活をしているような気もするが、まだ2日目。
まだ本格的なエッチをするには時期尚早だよな。
3ヶ月?くらいは少しだけのエッチで我慢しよう。
インターホンが鳴った。
マンションの管理人室からの連絡だ。
俺が住むマンションには管理人室があり、24時間、管理人が常駐している。
来客や通販の荷物が来たことなども知らせてくれるのだ。
俺の両親が来たらしい。
何の用だろ。
いつもなら来る前にスマホに連絡してから……あ、もしかして。
スマホを確認すると充電が切れていた。
たまにやってしまうのだ。
俺も今時の若者なので、自宅に固定電話はないし。
スマホを2台持てば良いのかもしれないが、まあ、そこまでしなくてもとか思うし。
あ、俺の家には佐藤さんが。
「佐藤さん」
「隠れませんよ」
「え?」
「加藤様のご両親に御挨拶をいたします」
「え、でも」
「結婚を前提にお付き合いしていると御挨拶してもよろしいですよね」
「は?」
「は? とは、了解ですか否定ですか」
「ちょ、ちょっと待ってよ佐藤さん」
「何をでしょうか」
「俺と佐藤さんは、結婚を前提にお付き合いしているの?」
「私とあれだけのことをしておいて、加藤様は責任を取るつもりがないと?」
「……」
あれだけのことをしておいてと言うのは、一緒にお風呂に入ったり、ちょっとしたエッチのことを言っているのだろうけど。
いや、俺にあれだけのことをしているのは佐藤さんだよね。俺、お願いしてもないけど。
やばい、佐藤さんの目が怖い。
「責任は……取るつもりです」
「ありがとうございます」
両親がやってきた。
「どうしたの?」
「どうしたのって、お前のスマホに連絡つかないから」
「あ、ごめん。充電切れていた」
「しっかりしろよ」
「うん」
「冷蔵庫、変わってたぞ」
「変えたしね」
「休みの日に買いに行こうと思ってたんだがな」
「サプライズだよ」
「お前な……代金は」
「半分の20万円でいいよ」
「そうか、ありがとう」
ここまでの会話は父親。
「それはそうと、氷狩」
「うん」
氷狩は俺の名前だ。
俺を氷狩と呼んだのは、俺の母親。
「玄関に女性の靴があったけど」
「うん。昨日から同棲している彼女の靴だね」
「はい?」
「結婚を前提にお付き合いしている彼女」
「そんな人がいたの」
「うん」
「そう、氷狩も22歳だもんね。昔はあんなに小さかったのに」
「まあね」
そりゃあ、昔は小さかっただろうね。
「で、その彼女さんは」
「母さんたちが嫌じゃなければ紹介するけど」
「どうして嫌だと思うの?」
「いや、そんな親もいるのかと」
「私は嫌じゃないわよ。あなたは?」
父親に聞く母親。
「俺も嫌じゃない」
「そうよね」
俺は佐藤さんを両親に紹介することにした。
「呼んでくるよ」
寝室にいる佐藤さんを呼びにいった。
「佐藤さん」
「みるくさん」
「あ、みるくさん」
「はい」
「両親が会いたいって」
「分かりました」
プライベートではお互いを「みるくさん」「氷狩さん」と呼ぶようにしたのだった。
「こちら、佐藤みるくさん」
「初めまして、佐藤みるくです」
「息子の父です」
「息子の母です」
俺の両親に頭を下げて、俺の父親に名刺を渡す佐藤さん。
「これはご丁寧に。ほう、プラス家電の社外取締役担当秘書さんですか」
「はい」
「こんな美人さん、どうしたのよ氷狩」
「どうしたのって……駅の階段から落ちたみるくさんを俺が受け止めて助けたのが最初かな」
「なるほどね、氷狩の筋肉が役にたったのね」
「まあ、うん」
「氷狩さんの筋肉にはいろいろとお世話になっております」
「あら、そうなの?」
「はい」
どんなお世話だ。
「重たい物とか運んでくれるし助かるわよね」
「はい」
いや、佐藤さんは2トンの乗用車も軽々と運べるからね。
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