新婚初夜

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「ヨミはさ、優しいね。だって、今の話を黙っていて、魂の契約を結ぶことだってできたでしょ。けど、そうしなかった。私を騙して結婚するなんて、ヨミはそんなことできなかった。優しいよ、本当に」 「……違う、これはただの保身だ。後から真実を知り、嫌われるのが怖かったのだ。ただ臆病なだけなのだ、余は……。」 「ほら、そういうところ。」  ヨミの白く滑らかな頬にそっと触れ、顔を上げさせる。泣き濡れた美しいかんばせが恵菜をじっと見上げていた。 「心から愛してほしいって思ってる、純粋なところとか……。潔癖なくらいに誠実であろうとするところも、心のつながりを何より大切にしてくれてるところも、全部好き。これ以上の人、向こうの世界で生きてたって一生見つかりっこないよ」  ヨミのまなじりからまた涙がじわりと滲んで、せきとめられていたのが決壊してあふれていく。ぽろぽろと頬をすべるそれを恵菜は指で拭った。 「もう、とうに覚悟は決まってるんだからさ」  ここまで全身全霊で愛されて、求められているのだ。それに応えないなんてこと、あり得ないだろう。彼の愛の深さを相手にしては、私が何を捨てたってかないっこないのかもしれない。
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