甘い葡萄

1/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
穏やかな平原に、一人の少女が横になっていた。 「……………もうすぐ『葡萄会』だな……。」 じゅるり、と零れそうになる唾液を呑み込んで、立ち上がった。 「『葡萄を甘くする魔法』を修得しておかないと…………。」 その瞬間、強い風が吹いた。 気が付くと、まるで風に連れてこられたかのように、皇子が現れた。 「魔法の修得は終わったのかい?フルール。」 優しく何かを撫でるような声で、少女、フルールに声を掛けた。 「安心してよ、今から修得を始めるから。」 にやけるフルールに、皇子は呆れた顔で言う。 「全くいつもそうだな。ほんと、ギリギリに何かを始めるから、こっちも驚いてしまうんだよ、名を残す様な魔法使いは、時間の感覚が違うのか?」 それを聞くに、フルールはけらっと笑った。 「どうだろうね?私だけかもよ………。というか、私、歴史に名を残すのかな?」 「…………当たり前だ……この国……いや、この星を救った大魔法使いだ。歴史に刻まれない訳が無いだろ。」 のろのろだらだらと生きてきただけなのに、 救われた私が居た。 救ったのは、貴方の方だ、皇子エテルニテ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!