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穏やかな平原に、一人の少女が横になっていた。
「……………もうすぐ『葡萄会』だな……。」
じゅるり、と零れそうになる唾液を呑み込んで、立ち上がった。
「『葡萄を甘くする魔法』を修得しておかないと…………。」
その瞬間、強い風が吹いた。
気が付くと、まるで風に連れてこられたかのように、皇子が現れた。
「魔法の修得は終わったのかい?フルール。」
優しく何かを撫でるような声で、少女、フルールに声を掛けた。
「安心してよ、今から修得を始めるから。」
にやけるフルールに、皇子は呆れた顔で言う。
「全くいつもそうだな。ほんと、ギリギリに何かを始めるから、こっちも驚いてしまうんだよ、名を残す様な魔法使いは、時間の感覚が違うのか?」
それを聞くに、フルールはけらっと笑った。
「どうだろうね?私だけかもよ………。というか、私、歴史に名を残すのかな?」
「…………当たり前だ……この国……いや、この星を救った大魔法使いだ。歴史に刻まれない訳が無いだろ。」
のろのろだらだらと生きてきただけなのに、
救われた私が居た。
救ったのは、貴方の方だ、皇子エテルニテ。
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