甘い葡萄

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「フルール、君には素晴らしい意志があったと聞いた。『この国を救う』という膨大な夢なのだろう?」 「…………何故そんなくだらない夢を…………。」 皇子は、優しそうな顔から、厳しい顔に色を変えて、口を開いた。 「何がくだらないのかい……?君は、亡くした家族や村の人々を見た時、改めて身の回りのあたたかさを学んだはずだ。」 「食事が当たり前に出来ること、服を綺麗にして、当たり前に着れること、夢を当たり前にもてること……………。その全てを失った。」 「僕も同じだ。位が違っても、この国の皆が苦しむのを、もう見たくはない。」 その真剣な眼差しに、フルールは心を打たれた。 「___私で良ければ………………力にでも何でもして下さい。」 それから、何年もの時が経った。 魔法使いフルールは、なんと勇気のある人だろうか。 今まで誰も立ち向かう事すら出来なかった魔族たちに力を奮った。色々なものを失った国民たちを、花を咲かせる魔法で元気づけたりした。 ほんの少しでもいい。 この国を救おう。 ”当たり前”を取り戻すために。 そのうち、人々はフルールに力を貸すようになった。魔法使いを軍にして、魔王軍に立ち向かった。少しでも当たり前を取り戻そうと、食事や衣服を手にするための魔法を学んだ。 いつしか、他国の人々も力を貸してくれた。 他にも同じような状況にあった国が沢山とあったようだ。 人々は、星を救おうと生きるフルールを、 神のように想っていった。
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