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私を、探して
寒い。
体の芯まで凍り付きそうだ。
生まれて十二年、これほどの寒さを感じたことはない。
一緒に毛布に包まっている健斗の体温が、かろうじて生きている実感を与えてくれた。
周囲を見渡しても真っ暗闇。
それに対し、数メートル先は薄っすらと明るい。
洞窟の入口。
外が明るいのは、雪に月の光が反射しているからだろう。
ここに入った時よりも、強い冷気を感じる。
寒さに身を震わせた時だった。
人影!?
僕は、月明かりを遮る影を見た。
影の形は……女性に見えた。
こんな山奥で、あり得ない。ということは、やはり。
ああ、健斗の口車に乗せられるんじゃなかった。
好奇心とは厄介だ。無謀な行動を促し、時に人の命まで奪ってしまう。
多くの冒険者と同じように、僕もここで……。
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