私を、探して

12/16
前へ
/16ページ
次へ
* * *  目が覚めるとベッドに寝ていた。見知らぬ天井。体を起こして確認すると、そこは病室だった。町で一番大きい、入院設備のある病院。僕たちは、隣り合わせのベッドに寝かされていた。 「目が覚めたか、涼介」  健斗は、窓の薄いカーテンを開けて外を見ていた。先に目覚めていたようだ。僕も起き上がり、健斗の横に並んだ。外は見渡す限り雪が積もり、白銀の世界と化していた。 「助かったのか?」 「みたいだな」 「健斗、ずっと眠ってただろ。おめでたい奴だ。お前が寝ている間にな、大変なことが……」  言ってしまっていいのだろうか? あれは本当に起こったことなのだろうか? 寒さで神経が麻痺して、幻覚を見ていたのではなかろうか。 「隠し事はなしだぞ。俺たちは一心胴体、同じ毛布で体を温め合った仲なんだからな」 「やめろよ、恥ずかしいな。まあいい。信じるか、信じないかはお前に任せる」  僕は、洞窟に入ってからの出来事を順を追って話した。健斗は眠ってからの記憶が抜け落ちているらしく、目を丸くしながら聞いていた。 「結局、その女の顔は見なかったのか?」 「怖すぎて、目を開けられなかった」  臆病者だと言われても仕方がない。でも、あの時は目を開けることなど出来なかった。 「あーあ、伝説の巫女に会えたかもしれないのに、残念。なぜ、起こしてくれなかったんだよ」 「起こしたさ。むにゃむにゃと寝言を言ってたの、お前だろう」 「超美人、しかも、薄着だったんだろ。あーあ、もったいない」 「いやらしい想像してるだろ。二百年前のお化だぞ。俺はごめんだね」  健斗は、あの恐怖を味わっていないから呑気なことを言えるのだ。 「ところでさあ、探しにきたの、うちの両親だろ。涼介の両親もいたのか?」  僕は確かに洞窟に響く父親の声を聞いた。その後、気を失ってしまったので、記憶が途絶えていた。 「うちの両親も来てたみたい」 「健斗は親と話したのか?」 「ちょっとだけな。とりあえず、今は休みなさいって言われた」 「変だと思わないか?」 「何が?」  体を動かしたことで脳みそが働き始めると、どうしても腑に落ちない点が出てきた。健斗は気付いていないのだろうか? 「山を登ったこと、誰にも言わなかっただろう」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加