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目が覚めるとベッドに寝ていた。見知らぬ天井。体を起こして確認すると、そこは病室だった。町で一番大きい、入院設備のある病院。僕たちは、隣り合わせのベッドに寝かされていた。
「目が覚めたか、涼介」
健斗は、窓の薄いカーテンを開けて外を見ていた。先に目覚めていたようだ。僕も起き上がり、健斗の横に並んだ。外は見渡す限り雪が積もり、白銀の世界と化していた。
「助かったのか?」
「みたいだな」
「健斗、ずっと眠ってただろ。おめでたい奴だ。お前が寝ている間にな、大変なことが……」
言ってしまっていいのだろうか? あれは本当に起こったことなのだろうか? 寒さで神経が麻痺して、幻覚を見ていたのではなかろうか。
「隠し事はなしだぞ。俺たちは一心胴体、同じ毛布で体を温め合った仲なんだからな」
「やめろよ、恥ずかしいな。まあいい。信じるか、信じないかはお前に任せる」
僕は、洞窟に入ってからの出来事を順を追って話した。健斗は眠ってからの記憶が抜け落ちているらしく、目を丸くしながら聞いていた。
「結局、その女の顔は見なかったのか?」
「怖すぎて、目を開けられなかった」
臆病者だと言われても仕方がない。でも、あの時は目を開けることなど出来なかった。
「あーあ、伝説の巫女に会えたかもしれないのに、残念。なぜ、起こしてくれなかったんだよ」
「起こしたさ。むにゃむにゃと寝言を言ってたの、お前だろう」
「超美人、しかも、薄着だったんだろ。あーあ、もったいない」
「いやらしい想像してるだろ。二百年前のお化だぞ。俺はごめんだね」
健斗は、あの恐怖を味わっていないから呑気なことを言えるのだ。
「ところでさあ、探しにきたの、うちの両親だろ。涼介の両親もいたのか?」
僕は確かに洞窟に響く父親の声を聞いた。その後、気を失ってしまったので、記憶が途絶えていた。
「うちの両親も来てたみたい」
「健斗は親と話したのか?」
「ちょっとだけな。とりあえず、今は休みなさいって言われた」
「変だと思わないか?」
「何が?」
体を動かしたことで脳みそが働き始めると、どうしても腑に落ちない点が出てきた。健斗は気付いていないのだろうか?
「山を登ったこと、誰にも言わなかっただろう」
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