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* * *
翌週の月曜日、教室に入った直後、健斗が慌てて駆け寄ってきた。
「じいちゃんのノートを読んでたら、新たな事実が分かったんだよ!」
「もう、山登りや死体はごめんだぞ」
前回はこの勢いに乗せられてしまった。健斗の話は、何割か引いて聞いておくのが得策だ。
「早く言ってくれ。もうすぐ、一限目が始まってしまう」
「二百年、遺体を保存しないと呪われるって話、あれは、宮司と巫女の造り話だったんだよ」
「どういう意味だ?」
「二百年というのは正しい。ただし、それは巫女が人間として復活できるまでの時間だったみたいだ。巫女はそういう予知を得たそうだ」
死んだ人間が、復活するだと? キリストか?
「有力者に、そのまま話しても実行されないだろうと二人は思った。だから、遺体を保存しないと呪われるって話にしたんだ」
ちょうど、始業のチャイムが鳴ってしまった。聞きたかったが時間切れだ。
「また、あとでな」
健斗は「じゃあ」と右手を上げて、自分の席へと急いだ。
教室のドアが開き、担任の先生が入ってきた。
「ほら、早く座れ。今日は、みんなにグッドニュースだぞ。転校生だ、転校生」
その言葉に教室中がザワザワしだす。こんな中途半端な時期に転校生が来るのか?
「さあ、入って」
先生に促され教室に入ってきた人物に、僕の視線は釘付けになった。
すらりとして背が高く、透き通るような白肌の女性。
女はうつむき加減で、教卓の脇に立った。そして、勢いよく顔を上げると一人の生徒に視線を送った。その先にいたのは僕だった。
「涼介君……でよかったかしら?」
女は口元をわずかに緩めて、不気味な笑みを見せた。
(了)
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