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「まぁ、せっかちな人間には、分かるまいよ」ベニーはそう言うと
腰掛けていた石から立ち上がり、また、ぶらぶらと歩き始める。
その後を、セイジも付いて行く。
「何で、一緒に来るんだ?」「だって、同じ方向だもの」
「先に行けば良いだろ?」ベニーは、鬱陶しいと言う顔で言う。
「嫌だ、また、魔物が出て来るかも知れないじゃないか」
「出たら、戦えば良いだろ?」「無理だよ」
「無理なのに、なぜ、この森を歩く」「、、、行く所が無いから、、」
武器も、防具も持たず、こんな魔物が出る、森の中に居るなんて
どうせ、さっきの村で、悪さでもして追い出され
この先の街に行く所なんだろう、ベニーは、そう思った。
「なぁなぁ、俺を、ベニーさんの弟子にしてくれないかな~」
セイジは、また、厚かましい事を言う。
「嫌だ、私は、人間は嫌いなんだ、弟子にするなど、とんでもない」
「え~っ、俺、出来るだけ、人間じゃない様に、気を付けるからさ」
『何だと、人間じゃない様に、気を付けるだと、いったいどうやって?』
ベニーは、密かに笑い『おかしな奴だな~』と、思う。
歩いていると、川の傍に出た「セイジ、お前、何日、体を洗っていない?」
「え?え~っと、五日くらいかな」「もっとだろ?臭いぞ」
「えっ、ほんと?」セイジは、クンクンと、自分の匂いを嗅ぐ。
「一緒に歩くなら、身体を洗って来い、服もな」ベニーはそう言うと
杖を振って、大判のタオルと、石鹸が入っている桶を出し
セイジに渡すと「これは、身体を洗う石鹸、こっちは服を洗う石鹸」
と、教え、川へ追いやる。
「俺が、身体を洗っている時、魔物が出たら、やっつけてくれよな」
セイジはそう言うと、川へ入って、身体を、ごしごし洗い始めた。
「この間に、私に置いて行かれるなんて、思っても居ないようだな」
ベニーの話を聞き、疑いもせず、言われた通りにするなんて
そんな所は、確かに人間と言うより、犬みたいだと、ベニーは思う。
ベニーは、杖を振って枯れ枝や、枯れ木を集め、焚火を作った。
体も服も洗ってきたセイジを、焚火の傍で温まらせている間に
洗った服は、魔法で乾かしてやる。
「ほら、もう乾いたぞ」「わぁ~有難う、ベニーさん」
セイジは、大喜びで、乾いた服を着ると「さっぱりした~」と、笑う。
その懐っこい笑顔も、まるで犬だなと、思う。
「じゃ、行こうか」二人は、また、ぶらぶらと歩き始め
可愛い花を見つけては、じっと見たり、蝶が飛んで行く先を眺めたり
落ちている木の実を見つけ、リスの姿を探す。
随分、のんびり歩いていたのに、夕方には、ちゃんと街に着いた。
街は、初めてなのか、セイジは、あちこちを、きょろきょろと見まわす。
「セイジ、ちゃんと付いて来い、迷子になるぞ」「うんっ」
ベニーに、付いて来いと言われ、セイジは、嬉しそうに、傍に寄る。
ベニーは、一軒の肉屋に入って行き「肉を買ってくれ」と言った。
「良いとも、どんな肉だ?」「これだ」ベニーは、熊魔獣の肉を取り出す。
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