キハダ

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「ブルー、この人達のために、雨を降らせてよ」と、ヒスイが言う。 「良いとも」初めてヒスイが、自分を頼ってくれたと、ブルーは喜び 水を、雨状にして降らせた。 「わぁ~雨だ~」「ドラゴン様が、雨を降らせてくれた~」 村人たちは、大喜びで、雨の中で燥ぎまくった。 「水も出来たし、これで食事を作って呉れ」ベニーは、ポケットから 肉や野菜を、山の様に出して、村人に頼む。 「こんなに沢山?」「ああ、此奴らは、皆、大食いなんでね」 「それでも、こんなには要らないよ、村の皆も、一緒に食べると良いよ」 セイジが、そう言うと「本当に、良いんですか?」 と、村人は驚きの声で聞く。 「ああ、良いとも」「薪を集めて来たぞ、火を焚こう」 ギンシュと、ヒスイは、もう火を焚き始めた。 ギンシュとセイジが、その火で、肉を焼き 村人たちは、肉と野菜がタップリのスープ煮を作り 「久しぶりの、ご馳走です」と、大喜びしながら食べる。 全員が、お腹一杯になり、食後のフルーツや、紅茶を楽しんでいると 「ドラゴン様、どうかこの娘を、、」 と、村長が、白い服を着た娘を連れて来た。 「こんな娘がいたのか?食事の時は、居なかったのに」と、皆は驚く。 「はい、この村の、たった一人の娘です、大事にしていたのですが 村を救ってくれた、ドラゴン様の、生贄になるなら 本望だと、本人も、申しますので」「生贄だって?」「何だそれ?」 セイジもギンシュも、ブルーも驚く。 ブルーが、折角雨を降らせてくれたが、そのお礼が何も無い せめて、この娘を生贄にと、いう事らしい。 何も知らないブルーに、生贄の事を話して聞かせると 「俺、人間なんて食わないから、そんな物要らない」と、ブルーは言う。 「ですが、他に何も、お礼が有りません」村長は、困った顔で言う。 「御礼なんて良いから、それに、雨は、一度降らせただけだ。 また、直ぐに乾いてしまう、その対策をしないと」と、ベニーが言う。 「そうだよな、明日、この周りを見て回って、何か、良い策を考えよう」 セイジが、そう言って「生贄なんて、馬鹿な考えは止めて下さいね」 ヒスイも、その娘に優しく声を掛ける。 「有難うございます、有難うございます、村のためとはいえ 病気の母を、置いて死ぬのは、、、」娘は、そう言って泣いた。 「もう泣くな、俺が何とか、良い手を考えてやる」 セイジは、その娘の頭を、優しく撫でながら、そう言った。 目に涙をいっぱい貯めて、それでも嬉しそうな顔をする、その娘は クルミと言う16歳の娘だった。
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