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第一話 夜行列車は、昨日を越えて
午前十時。そのカフェは、今日も擦りガラスの扉を開けていた。
千鳥川駅付近は、都会ほどの便利さはないが、寂れてはいない。高架沿いの、こぢんまりとした商店が立ち並ぶ一角に、カメラのピントを合わせる。
するとぼやけた液晶モニターに肉眼で見るより拡大され、くっきり建物が浮かび上がった。
鉄道カフェ『ちどりがわ』。駅舎風のレトロな佇まいで、初めて見た時からどこか懐かしさを覚えていた。
赤い三角屋根の下では丸い時計が時を刻み、外壁は木のぬくもりを感じさせる。入り口の扉の上には大きな庇があって、雨宿りができそうだ。
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