第一話 夜行列車は、昨日を越えて

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「お待たせしました、ちどりがわランチセットです」  小安の声で、美星は顔を上げる。磨き込まれた丁寧さを感じる笑顔だ。料理の腕もよく、世間話にも親身になる。小安の経営するちどりがわには、地元民だけでなく鉄道ファンもよく訪れていた。 「すみません、小安さんの休憩時間ギリギリに来てしまって」  ランチメニューは午後三時までで、そのあと店長の小安は休憩に入る。他のスタッフがカフェメニューを六時の閉店まで担当する決まりだ。  用事があって昼食が遅れたが、美星はちどりがわ来店一周年を密かに祝いたかったのだった。
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