第一話 夜行列車は、昨日を越えて

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「美星おねえちゃん、かけこみ乗車セーフ!」 「こら、蓮! この子ったら、ちどりがわではしゃいでばかりで」  石塚(れん)は五歳の幼稚園児、母親の千帆(ちほ)は二十六歳の美星より二つ年上だ。美星とは、ちどりがわで顔を合わせるうちに仲良くなった。  幼稚園では臆病な蓮だが、家やこのちどりがわでは腕白ぶりを発揮している。いわゆる内弁慶な所があって、千帆の悩みの種らしい。  「この間も、木に芋虫がいたから園庭で遊びたくないって、駄々をこねちゃって……」 「だって、きもちわるいじゃないか。ぼく、芋虫なんかだいきらい」  客席に来た小安に蓮は主張する。小安はしゃがんで、椅子に座る蓮と目線を合わせた。
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