第一話 夜行列車は、昨日を越えて

12/18
前へ
/128ページ
次へ
「気持ち悪いなんて、言いすぎだよ。自分だって言われたら、腹が立つし悲しいだろう?」 「だって……きらいなんだもん」 「本当は嫌いじゃなくて、怖いんじゃないかな。それはね、似てるけど違う気持ちだよ」  蓮はしばらく考えるうちに、気弱な表情を覗かせた。 「……うん、こわい」  蓮のつぶやきは、幼い頃両親と死別した美里の中にも浸透した。伯父の家で暮らし、食事時ですら居づらい思いをしていた頃があった。  嫌いで片付けるのは簡単だ。美星は居場所を失うのが怖かった。そんな自分を受け入れるまで、どれほど時間がかかったか。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加