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「あ、あの小安さん。私からもお伝えしたいことがあります」
意を決した美星は、隣の席の紙袋の中から小さな箱を取り出した。
セピア色の包装紙に赤いリボンが巻かれた、小さな平たい箱を小安の前に差し出す。驚いた小安は目を丸くして、ゆっくりと箱を受け取った。
「これは……?」
「母のレシピを見て作りました。小安さんはいつもちどりがわの店長として頑張っている。でも頼もしいだけじゃなくて、抱えた悩みを背負って生きていく優しさもあって」
美星は瞼の涙を、マニキュアで飾った指先で掬った。
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