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「ああ、自分の告白の返事より先に、小安さんの気持ちを聞けるとは思っていませんでした。緊張しすぎましたが、うまく喋れたでしょうか」
「四日も早いバレンタインデーか。俺も、つい特急並みのスピードで告白してしまいました」
その言葉で張りつめた空気が緩み、発車ベルのように笑いの声が響いた。
リボンを解いて箱を開けた小安の顔が、ひときわ輝く。
箱の中には、粉糖をふったチョコレート色のカップケーキが四つ。小さなハート型を、四葉のクローバーのように並べてある。
「素敵なガトーショコラですね。せっかくなので一緒に食べませんか?」
美星が頷くと、小安は箱を持って厨房に入る。しばらくして、皿の上に一つずつガトーショコラを乗せたお盆を運んできた。皿には、生クリームの上にミントの葉を添えてある。
母のレシピから生まれた美星のガトーショコラが、小安の手で夢に形を与えられて、一等星よりも輝いて見えた。
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