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「では、天原さんが俺のために作ってくれたケーキ、有難くいただきます」
改めて向かい合うと何だか気恥ずかしい。二人は手を合わせると、ガトーショコラのカップを外して、フォークを入れた。
「あれ、中に入っているのはりんごですね」
「そうなんです。酸味があって、チョコレートに合いますよね。私もこれからは、母や小安さんに負けないくらい、思い出に残る味をを作りたいです」
ケーキを口に入れた小安の顔が幸せそうに緩んだ。
美星の口の中でも、ほろほろと崩れるガトーショコラの甘さとりんごの味が重なる。生クリームとミントも加わって、舌の上で完成されたハーモニーとなる。
美星も、この上なく満ち足りた顔で小安に微笑んだ。
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