第五話 未来を紡ぐダイヤグラム

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 一年前の春までは見知らぬ者同士、きっとすれ違っていても気付かなかったろう。  無数に張り巡らされた人生の途上には、避けて通れぬ不幸もあった。    しかし様々な偶然と、出会った人々の縁がなければ、美星と小安は今日という駅までたどり着けなかった。  小安が急にしんみりとなった。きのうまでの通過駅を振り向いて、心の中でそっと手を合わせているのだろうか。 「私、小安さんと出会えてよかったです。これからも、よろしくお願いします」 「ああ……ごめん。慣れないものだな、幸せってさ」  鼻の下を擦って、小安は表情を誤魔化す。美星は柔らかな微笑で小安を見守った。  真新しい二人のダイヤグラムノートが、心の奥で開かれる。  大丈夫。心がたわむ日も、未来に続くレールはどこまでも真っすぐに伸びている。  あしたへの列車に乗っていこう。  生まれたての、朝焼け空を迎えるために。    <了>
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