第一話 夜行列車は、昨日を越えて

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 天原美星(あまはらみほし)はカメラを手に、道の端から何枚か写真を撮る。誰に見せるためでもない、プライベートな思い出作りだった。  毎日、ジーンズとシャツの組み合わせを変えるだけのカジュアルな服装だ。それでも、普段は結うだけの髪を、下ろしてハーフアップにした。  美人とか可愛いとか言われることはあまりない。けれど「笑顔がいいね」と褒められることは多い。だから、美里はどんな時も明るく振舞うことにしていた。  新しいカフェデビュー、それはちょっとした記念日に違いない。  園辺市(そのべし)に引っ越してきたばかりの美星には、居心地のいい場所を見つけるための冒険だ。
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