第一話 夜行列車は、昨日を越えて

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 美星は黒目がちな瞳で、カフェの全景を改めて見渡した。  店の看板はといえば、駅のホームにあるようなもので珍しさが目を引く。  鉄道カフェ『ちどりがわ』。駅名の入るところにそう記されている。隣駅は『きのう』と『あした』、時間旅行の列車を待つみたいだ。  美星は十時ごろに、通勤のためカフェの前を通る。換気しているのか、ちどりがわの扉はいつも開いていた。しかし美星が帰る時刻には営業が終わっている。  鉄道カフェとはどんなところか、気になるばかりだ。そんなわけで仕事の休日、思い切って愛用のカメラを片手に、ちどりがわを初訪問したのだった。好奇心をもって訪れる客は、きっと珍しくはない。店の人に頼んで、店内を撮影させてもらおう。  
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