第一話 夜行列車は、昨日を越えて

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  * * *  あれから一年……か。  ランチタイムの賑わいが終わり、ちどりがわは、のどかな空気が漂っていた。  白をベースにしたカフェの店内は、シャンデリアの光でオレンジ色に包まれている。細長い店内はまるで食堂車のようだ。壁には鉄道のプレートが飾られ、鉄道雑誌や写真集を集めた本棚が置かれている。  美星は窓辺の席でスマホのアルバムを覗いていた。カメラで撮影した写真はスマホをアルバム代わりにしているが、気恥ずかしくて人に見せたことはない。  『園辺市』のフォルダには、この街の何気ない風景が並んでいる。
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