安全なレールを歩いてきた人

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「帰ろ。あたし、お腹空いちゃった。ごはん食べたら、ちゃんと勉強がんばるから」 「……ごめん」  五つも年下の従妹に、気を遣わせてしまったのが情けない。  ユメはガイドブックをリュックにしまい、スマホをじっと見つめてから閉じる。  家に帰って、二人とも砂まみれなことを母に笑われた。  笑いながら、服の砂を払ってくれる。  シャワーを浴びて髪の砂も落として、勉強して、夕食を食べて自分の部屋にもどる。  小さめの一戸建てだから客間なんてものはない。ミチルの部屋にユメの布団も敷かれている。  二人で並んで布団にもぐり込んで、ユメは枕を抱えて転がり笑う。 「えへへ。なんか修学旅行みたいだね。こういうの楽しいなぁ。夜明けまでおしゃべりして先生に怒られたよ」 「あぁ……なんか言われなくても想像つくよ……。あんた絶対に枕投げもしてたでしょ」 「ええっ! なんでわかるの。超能力?」 「透視でもなんでもなくて、ユメがわかりやすいんだよ。たぶんババ抜き弱いでしょ」 「ぶーぶー! 当たってるけど、あたしだってポーカーフェイスのひとつやふたつ!」  喜怒哀楽がはっきり顔に出て、コロコロ表情が変わる。賭け事には向かない子だ。 「早めに寝るよ。明日も勉強しないとなんだから。おやすみ」 「はぁい……おやすみなさい」  久々に外に出て、ミチルは全身バキバキだ。  ミチルは電気を消してタオルケットを頭からかぶる。  ユメのスマホが通知音を立てる。ユメは画面をちらりと見て、目を閉じた。 「……ミチルちゃん、まちがってないよ。歩さんも、きっと」
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