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「いいや。そんなことはない。東堂があそこにいたのは東堂だからだ。俺には才能がなかった。親にも三年になったらやめろと言われていたんだ」
駆は三年最初の学力テストで、数学が赤点ギリギリになった。もちろん両親の怒りが噴火した。
「運動部なんてしているから成績が悪いんだ、陸上をやめろ。成績を落として留年なんて、親不孝な真似しないわよね」
「もう高校生なんだから、世界選手目指すなんて子どもじみた夢なんて見てないで、大学に行きなさい。きちんと地に足のついた仕事をしなさい」
駆は親に逆らえず、翌日陸上部をやめた。
東堂は、「まだおれがお前に勝ててないのに逃げるな」と泣いて抗議してきた。
駆の両親にも文句を言いに来たが、両親は東堂を追い返した。馬鹿と付き合うと馬鹿になるからアレと付き合うなとまで言った。
東堂は今でも思っているだろう。
自分より早い駆が抜けたから取れた三位なんだと。
こうして、東堂の中にもまだわだかまっている。
(だから、東堂に会いたくなかったのに)
そのあとみんなと何を話したか覚えていない。
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