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ミチルはとりあえず座布団に座り、ユメの現状を確認する。
「勉強が苦手としか聞いていないんだけど、どこがわからないの?」
「んー。ぜんぶ。これ前回のテストなんだけどねー。五教科合計で100点なの」
ドヤ! と出された答案用紙は、国語30点、英語24点、数学20点、現代社会16点、科学10点。一枚出すごとにどんどん下がっていって、10点を見た時には背筋が震えた。
どれも赤点。ミチルはこんな点数、とったことが無い。
赤点大王の本人はあっけらかんとしている。
「……………よく三年生になれたね」
「担任のしょーちゃんにも言われたー。皆勤賞なのが唯一の救いだって」
担任教師に同情する。皆勤賞なのにこの点数じゃ、授業でなに聞いてんだと言われるのも仕方ない。
汗をかいたグラスの中で、氷がビキリと音を立てる。
「わからないところがわからないの。春にお母さんが塾通わせてくれてたんだけどね、塾の先生に「最低限高校の勉強ができるようになってから来てください」って泣かれた」
「そうだろうね……」
この成績では、大学受験は絶対無理だし高校卒業できるかどうか怪しいところだ。
家庭教師を引き受けた以上は、最低でもどの教科も赤点を免れるまでにはしてあげないといけない気がする。
ミチルはまず、ユメがわからないところまで戻ることから始めることにした。
中三の時から高三までのテキストが本棚に残っているから、それを全てリビングに運んだ。
テキスト付録の練習問題テストをユメに解いてもらい、採点する。
明らかになったのは、数学と英語が中三の段階でつまずいているということ。
中三の数学で50点、英語で46点。国語は68点なのでまあまあ救済できそう。
練習テスト三枚やったところで、ユメはテーブルに頬をくっつけて伸び切っている。
「もー疲れたよう。ミチルちゃん今日はここまでにしようよ」
「まだ二時間経ってないよ、ユメ」
「閉店がらがらー。今日のユメちゃんは終了しました」
口を尖らせて膨れている。やる気スイッチは完全に切れている。
洗濯しながら様子を見ていた母は、こっそり笑っている。
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