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……前世のわたしもわりと細かい設定が気になるタイプだったけど……それにしても学園舞台の乙女ゲームのためだけに、国規模でここまで作り込むとは。
本格的に、設定厨のこだわりを感じる。
(同級生180人弱……その中に主人公が居るのかはまだ不明だけど…………でも! わたしが名実ともに悪役令嬢になれるかは、ここで決まる!!)
見知らぬ原作に割り振られた悪役令嬢という役割を見事にこなして見せよう──というわたしの意気込みは、ここに来て最高潮の盛り上がりを見せていた。
正直、この三年間、弱気になったり、怖くなったりすることもなかったわけじゃない。なんだかんだ言っても、ヒトに嫌われ、裁かれるのは恐ろしい。
(……大丈夫! この世界、死刑制度も奴隷制度もないんだから! 最悪でも修道院送りか労働階級落ちだから! 断罪エンド後、なんとでもなる!)
この三年で覚えたいつもの呪文を心の内に唱え、わたしはキッと前を向いた。
(悪役令嬢マーガレット、出ます!)
カタリと止まった馬車の扉がフットマンによって開かれる。
「講堂の扉まで随行致します」
この国のフットマンは護衛の役割も兼ねていて、走行中は御者の隣に立っている。
一つ大きく息を吐くと、剣だこを手袋で隠した手を取り、馬車からおもむろに、
(本番開始の第一歩!)
タイル張りのポーチに降り立った。
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