悪役令嬢本番スタート

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「金一封。寮に移る時に一筆書くわ。待っててね」 「お嬢様が何したいのかさっっっぱりわからないですけど、有言実行なところと気前がイイところは心から尊敬してます」 わたしは「この従者、何を当たり前のことを大声で……」とでも言うような煩わしげな表情を作りつつ、小声で彼と会話する。 「なら、その尊敬も言葉にしてよ」 「え、さすがに表現難しいです。うーん……あ、じゃあ……。 今朝以降、お嬢様にお会いできなくなった屋敷の者共は、失った黄金の輝きに涙することでしょう! しかしながら、お嬢様の寛大なお心で今日からはこの学園が照らされるのです! なんと素晴らしく、羨ましく、誇らしいことでしょうっ!」 「まったく、突然何かと思えば……」 (ヨシヨシ! 従者にわざわざ大袈裟に褒めさせるとか、悪役っぽい〜) 鼻高々。 多少わざとらしくとも、視線を集めて「マーガレット・クォーツ」という存在を広く印象付けられれば、今回はイイ。ただ、彼の言い回しはちょっと迂遠で……「全寮制の学校に入っちゃうから、しばらくはこういう小遣い稼ぎができなくて悲しいよ」って意味だと理解するのに、ちょっとかかった。 (さすがに同級生をお金で動かせるとは思えないから、なんとも微妙な発言だけどね……) 傲慢とか高飛車とか、悪役令嬢の必須素養だとはいえ、あれこれ考えて演じ続けるのも非常に面倒。だから我が家では基本、お金で解決してきた。 何かにつけてはお金をチラつかせ、使用人との間に線を引く。都合の悪いことがあれば、事の大小に関わらず、お金を握らせて黙らせる。 お金で人の心は買えるのよ、とでもいうような振る舞いは、いかにも甘やかされてる金満令嬢らしくてイイかな? なんて思ったり。まぁ、不精した結果の言い訳だ。
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