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(キタコレーーーーー!!!!)
案内の職員と応援に駆け付けた警備に取り囲まれ、ピンク色の少女は戸惑った声だけをこの場に残して、扉脇の小部屋に消えて行った。
──ふぅ……。
消えると共に、あちこちから詰めていた息を吐きだす音が響く。あからさまなお喋りこそないものの、突然の嵐のような出来事に講堂全体がザワついていた。
闖入者は、可愛い子だった。
だけど、驚くほどに常識がない。
(絶っっっ対そう! 規格外のふんわりピンク!)
コホンと傍系王族のおじ様の咳払いで、講堂は落ち着きを取り戻して行く。
けれど、
(主人公!!!!)
わたしの脳内だけは未だ、大騒ぎだった。
同級生の確率が高いと踏んでいた主人公。早目に見つけなければ、と思ってはいたが。
可憐なピンク。
まんまと入学式の日に騒動。
空気ヨメナイ。
これ、もう確定────。
王道中の王道が来た。今の子だ。
(じゃあきっと、傍系王族アレクス家のお坊ちゃんがメインヒーローかもね……。まだアレクス様の顔見てないけど、同学年で一番身分が高い男の子は攻略対象定石でしょ。
この後、別室で反省させられてる主人公とアレクスご令息様の初対面イベント、とか……?)
国家の御旗である直系王族に比べ、傍系王族は皇位継承権がない代わりにかなり人間らしい、余裕のある生活ができていると聞く。
しみじみと、「さすが設定厨のゲーム制作陣だ」と思う。
メインを王子ではなく傍系王族にすることで、身分差や教養不足が恋愛の障害になりにくいように考えたのだろう。
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