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ふと真崎伊織の視線を感じて顔を上げた。 彼は目が合っても、逸らすどころか遠慮なくまじまじと見つめてくる。 「どうしたの?」 「いやー……。俺はほんとにこの顔が好きなんだなって、再認識していました」 ストレートに見た目を褒められる機会はあまりないので、反応に困る。 肘をついて前屈みになってくる彼を前に、自然と腰が反った。 「もしも友馬くんと出会ってなかったら、風馬さんのこと好きになって、ここに通い詰めてたのかもなぁ」 「えっ」 「冗談です。俺は友馬くん一筋なんで」 真崎伊織は頬杖をつきながら笑った。 この何を考えているかわからないところが、実は少し苦手だ。里見もそういった面があるが、彼とは種が違う。 「風馬さんは付き合ってる人いるんですか?」 ふたたび話題が自分に向けられて、眉がかすかに動いた。 「え、なんで?」 「知りたいなって思ったから」 唇を結び、目を泳がせる。 さっと答えればいいものを、間を開けてしまったせいか、不自然な空気になってしまった。 「えっ。風馬さん、付き合ってる人いるんですか?」 追い討ちをかけるように、背後からわざとらしく問いかけられた。 やはり里見だった。 彼は無表情のままで、たいして興味もなさそうだ。 前後から視線を向けられてたまらなくなり、風馬はふきんを投げやりにテーブルに落とした。 「ノーコメントで」 それから里見をわざと押し除けて、キッチンへと入る。 ちょうどいい。ランチタイムのピークも終わったところなので、店は里見に任せて、事務作業をしてしまおう——スタッフルームのパソコンデスクの前に座った。
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