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窓の外の季節が、完全に移り変わった。
もうすっかり長袖姿になった道ゆく人々を眺めながら思う。
まるで風馬だけが夏に取り残されたかのように、半袖短パンのままだ。常連客に「昭和の小学生みたいだね」と言われるたびに気恥ずかしくなるが、キッチンに入ると暑くてたまらないのだ。
「これおいしいです」
カウンター席に座る真崎伊織が、フォークを唇に当てたまま発したのを、風馬は満足げに見届けた。
彼の注文したのはカレーパスタだ。
バターで炒めたパスタに、毎日仕込んでいるカレーを和え、とろけるチーズをたっぷりとかける。
ただそれだけのメニューだが、中毒性が強いのかリピートする客が多い。
「B級グルメっぽいでしょ」
「ほんとそれ。喫茶店のスパゲッティって感じで」
どこぞのだれかがSNSで発信してくれたらしく、最近ではミートソースに並ぶ人気の高さだ。
原価も安く時間もかからないため、店側からすると、大変ありがたい現象である。
手を拭きながら、風馬は壁時計に目をやった。
ちょうど今、待ち合わせ場所で落ち合ったころだろうか————
「うまくいってるみたいですよ」
こちらの心情を察したらしい真崎伊織が、スマートフォンの画面を傾けてきた。
そこには、照れくさそうに写真に収まる友馬の姿があった。撮影者は雅樹で、彼から真崎伊織へと、直接送られてきたようだ。
「友馬くんと合流したよ」というメッセージもついている。
——真崎伊織と友馬があの後、何を話したのかは、結局分からずじまいだ。わざわざ聞くつもりもない。
しかし、友馬は彼を突き放すことはしなかった。
同居を解消した今も、友馬は真崎伊織と定期的に会っているし、彼もこうして単独でも店にやってくる。
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